親鸞仏教センター

親鸞仏教センター

The Center for Shin Buddhist Studies

― 「現代に生きる人々」と対話するために ―

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The Center for Shin Buddhist Studies

― 「現代に生きる人々」と対話するために ―

『アンジャリ』WEB版(2020年6月15日更新号) 目次

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〈個〉から数へ、数から〈個〉へ――パンデミックの只中で
〈個〉から数へ、数から〈個〉へ――パンデミックの只中で 明治学院大学社会学部教授 加藤 秀一 (KATO Shuichi)  感染症であれ戦争であれ、災厄がひとたび起こってしまったなら、われわれがとるべき次善の方策は、できるかぎり犠牲者の数を少なく抑え、なるべく早くそれを終わらせることである。この単純な指針はごく常識的で、容易に実行可能であるように見えるかもしれない。だが必ずしもそうではない。なぜならそこには、人間を「数字」として扱うことをめぐるディレンマが潜んでいるからである。...
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反出生主義をめぐる混乱
反出生主義をめぐる混乱 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授 青山 拓央 (AOYAMA Takuo)  近年話題になっている「反出生主義」によれば、私たちは新たな人間を生み出すべきではありません。この主張には人々をぎょっとさせるところがありますが、その論脈を見ていくと、けっして挑発的なだけの主張ではないことが分かります。...
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『教行信証』をめぐるメモ
『教行信証』をめぐるメモ 比較文学、映画研究家 四方田 犬彦 (YOMOTA Inuhiko) *『教行信証』を信仰と教義の書物としてでもなく、メディア学、書物の社会学の視座に立って読むことは可能だろうか。この大部のテクストにおける先行する経典からの引用のあり方について、考えてみなければならない。  こういうといかにも難しく聞こえるが、次のようなことを考えてみるのはどうだろう。...
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「お迎え」から「摂取不捨」へ
「お迎え」から「摂取不捨」へ 大阪大谷大学文学部教授 梯  信暁 (KAKEHASHI Nobuaki)  最近『お迎えの信仰―往生伝を読む』という本を書きました。法藏館から発売中です。浄土真宗のご信心にはそぐわないタイトルだと思われるでしょう。私どもはお迎えを必要としません。それは親鸞聖人が教えてくださったことです。...
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インターネットの時代と仏教①
インターネットの時代と仏教① 親鸞仏教センター所長 本多 弘之 (HONDA Hiroyuki)  最近の新型コロナウイルスの蔓延は、人類への攻撃であるとされている。しかもそれが目に見えない敵からの攻撃のような脅威だから厄介である。近年多発している自然災害も、被災地で平穏に数十年の月日を送った老人が自分の生涯に経験したことのないものだ、と発言している。それにもまして、今回のウイルスの猛威は、近代に入って人間が営々と作り上げてきた政治経済等の様々な約束事や構造を木っ端微塵にしたといえよう。...
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インターネットの時代と仏教②
インターネットの時代と仏教② 親鸞仏教センター所長 本多 弘之 (HONDA Hiroyuki)  この新型コロナウイルスに対応する生活の中で、我々に起こる問題の一つは、「怖畏のこころ」ではなかろうか。怖畏の心とは、すなわち恐怖心である。何か自己をおびえさせたり畏れさせたりする物事が起こって、平常の生活が困難になるのである。この怖畏の心を、『十住毘婆沙論』では六種類に分類している。その六とは「不活の畏れ、死の畏れ、悪道の畏れ、大衆威徳の畏れ、悪名の畏れ、繋閉桎梏の畏れ」である。...
伊藤真顔写真
大仏さまと読経と鐘声――その「音」の力
大仏さまと読経と鐘声――その「音」の力 親鸞仏教センター嘱託研究員 伊藤  真 (ITO Makoto) ●東大寺大仏殿のニコ動中継  4月上旬、『中外日報』紙で「新型コロナ問題に対する韓国仏教界の対応」と題する佐藤厚博士(東洋大学井上円了研究センター客員研究員)の寄稿を拝読した。キリスト教系団体の礼拝で大規模なクラスター感染が発生した韓国では、仏教系最大の曹渓宗はいち早く各寺院に法要の自制を促すと同時に、宗派を超えた1万5000の寺院と共同で祈祷精進を行ったという。さらに韓国仏教界は、自宅で祈祷ができるように真言や発願文も完備した『薬師経』のテキストを作成したり、仏教系テレビ・ラジオチャンネルでも毎日各宗派が交代で「安心説法」を放送しているという。佐藤氏は日本では「仏教界を挙げてコロナ問題に対処しているという迫力が伝わってこないのが残念」だと述べていた。...
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破滅のさなかで
破滅のさなかで 親鸞仏教センター研究員 東  真行 (AZUMA Shingyo)  もはや怒りのあまり、言葉を失うほかない現状である。これまで日本に巣食ってきた差別や憎悪がいよいよ溢れかえっている。  4月末、岐阜県である男性が少年たちに殺された。被害者の方は空き缶を収集して生業としながら、図書館に通い仏教を学んでいたという。それはいかなる仏教であったのだろう。...
長谷川琢哉顔写真
「クロノスタシス」って知ってる?――野村佐紀子展“GO WEST”
「クロノスタシス」って知ってる?――野村佐紀子展“GO WEST” 親鸞仏教センター嘱託研究員 長谷川 琢哉 (HASEGAWA Takuya) コンビニエンスストアで 350mlの缶ビール買って きみと夜の散歩 時計の針は0時を差してる “クロノスタシス”って知ってる? 知らないときみは言う 時計の針が止まって見える現象のことだよ...
中村玲太顔写真
生きているだけで――祝福と逸脱
生きているだけで――祝福と逸脱 親鸞仏教センター嘱託研究員 中村 玲太 (NAKAMURA Ryota) ◇誰かの誕生日 誕生日をお祝いする、ということの意味が、ながいことわからなかったが、やっと最近になって理解できるようになった。ずっと、どうして「ただその日に生まれただけ」で、おめでとうを言ったり言われたりしないといけないのか、判然としなかったのだけれども、その日だけは私たちは、何も成し遂げてなくても、祝福されることができる。...