親鸞さんのわすれもの 脚本家 今井 雅子 (IMAI Masako) 「脚本家の仕事を動詞ひとつで言い表すと?」 講演のつかみに、この質問を投げかけている。真っ先に挙がる答えは「書く」だが、書くことと同じくらい「話す」ことに時間と労力を割く商売である。三時間の打ち合わせで話し合ったことを踏まえ、三時間かけて原稿を書くといった具合だ。話すことと対になる「聞く」も欠かせない。物語のモデルになる人物や職業について取材したり、世の中の声を拾ったり。執筆には「調べる」が欠かせない。膨大な資料を「集める」のも「読む」のも取材であり、読んで字のごとく「取って来た材料」を使い勝手のいいように整理したり並べ替えたり「まとめる」までが、料理で言うところの下準備。それを「組み立てる」のが調理で、「ひらめく」のは味つけといったところか。作業には終始「考える」が伴い、何度も「直す」「磨く」を経て脱稿、納品となる。...