親鸞仏教センターの研究員が毎月交代でエッセイを綴ります。
生命とは、生まれると同時に成長し、平衡状態に入り、そして老衰し、死に至る。この必然の生命現象には、しかしながらその過程それぞれに、生命の質の変化があると言えよう。成長過程の経験の蓄積は、濃密であってしかもその記憶は深く記録され、老化現象にも耐えて、いつも思い出されてくるのだと言われる。その反面、老化した人にとってのその時々の出来事は、すぐに忘れられてしまう。この文章の筆者も、いうまでもなく後期高齢者とされる老境にある。
〈200回記念本多弘之エッセイより〉