清沢満之が主唱した「精神主義」は、彼の下に集まってきた弟子たちともに、雑誌『精神界』などを中心に展開された。精神主義の信仰は当時の若者たちを強く惹きつけ、様々な反応を生じさせた。そしてそのような現象は、清沢と精神主義に限定されるものではなかった。2021年に開催した第6回清沢満之研究交流会では、「無教会主義」を唱えた内村鑑三および、自身の神秘体験を「見神の実験」として発表した綱島梁川の信仰とその波紋という現象を世紀転換期の「宗教思想運動」としてとらえ、相互に比較検討することを試みた。
第8回清沢満之研究交流会では、その時の視点を維持しつつ、さらに同時代の宗教思想運動を取り上げる。求道会館を中心に活動した近角常観、多くの賛同者を生み出した日蓮主義、そして「新仏教運動」などさまざまな仏教改良運動の拠点ともなった私立哲学館。これら精神主義とも深い関係を有した世紀転換期の宗教思想運動の検討を通じて、近代的信仰がどのような形を取り、どのように受容されたのかということを幅広く検討する。そして本交流会での議論を通じて、精神主義を同時代の運動の中に位置づけ、あらためてその特徴を浮かび上がらせてみたい。