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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 「現代と親鸞の研究会」の第2回目は、2002年1月23日、東京ガーデンパレス(お茶の水)において、医学界から帯津良一氏(帯津三敬病院名誉院長)を迎え、開催した。  このたびの研究会は、癌(がん)という病と闘うなかで帯津氏に出あい、現在も帯津三敬病院で治療を受けておられる篠崎一朗氏(板橋区在住・43歳)からのご紹介で実現した。
 当日は、癌治療の苦闘をとおして、現在の自分を語る篠崎氏からお話をうかがい、その後、帯津氏から問題提起をいただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
“いのち”の場と医療

医師 帯津 良一
〈篠崎一朗氏のお話〉
■ホリスティック医学と親鸞聖人
 5年前、進行胃癌と診断された私は、抗癌剤の治療とあいまって、帯津先生の言われるような、人間をまるごと見るホリスティックな医療といいますか、“いのち”の場を大切にした人間の自然治癒力に働きかける治療を並行して行いました。おかげさまで、通常の社会生活を営めるような健康体に戻ることができました。
 帯津先生がおっしゃるのは、やはりこころの問題だということです。それが私にとっては非常に勉強になりました。そして、こころの問題となると、私には親鸞聖人の教えが一番スムーズに入ってきたといいますか、常に自分は「凡夫」の身であるという自覚に立ち戻らせてくれる教えだといただいています。そういうところに立ってから、こころの平穏が保てるようになったのではないかと思います。  帯津先生には3カ月に一度の診察、また、「患者の会」では、闘病仲間と語り合ったりすることで、元気をいただいています。
 親鸞聖人の教えと帯津先生の考え方には、多くの共通点があり、闘病生活を通じて双方から学ぶところが多々ありました。やはり、健康体で生きていくためには、常にニュートラルなこころを維持していくことが大切です。そのためには、医療とあいまって、宗教的なこころをもって生活できればと思います。このことは闘病中の仲間にも発信していけたらと思っています。
〈帯津良一氏の問題提起〉
■希望のある死
 病状が悪化して、明るく前向きでいられる患者さんはひとりもおりません。皆さん暗くなります。人間は、本来明るく前向きにできてはいません。人間は寂しくて悲しいものです。これが当たり前なのだと思えばいいのです。そうすると、もう下はありませんから。明るく前向きというのは一気に奈落(ならく)の底へ落ちますけれど、初めから悲しいと思えば奈落の底へは落ちません。
 ただ、それだけで生きていくには大変ですから、ここで希望、生きがいが大事になってきます。患者さんにとって、一番大事なのが希望なのです。どんな状況にあっても、もう明日死ぬという人にも希望は必要なのです。まったく病気のない体に戻るという希望もあっていいですが、この希望はそういうことではないのです。要するに今日よりも良い明日という希望なのです。今よりも良い状況です。
 その希望をしっかり持っていくためには、先端を固定しなくてはいけないと思います。固定するとなると、死のところで固定せざるを得ないのです。未来に、はっきりしているのは死ぬことだけだからです。ですから、死に一回焦点を合わせて生を見るということが一番確かだと思うのです。
 名誉院長講話のなかで、「死」について私が感じたことをいろいろとお話いたします。すると、皆さんがニコニコして聴いてくれます。大勢いますから、ひとりでその死を背負わなくてもいいという気楽さがあるのでしょう。末期患者への激励は酷(こく)であり、そのような善意はとても悲しいと思います。死の不安に苛(さいな)まれている人というのは、その不安を和らげたいわけです。しかし、どうしても自分ひとりの力ではなかなか和らげられない。そういうときに、死について折に触れて考えているような人が側にいてくれることが、患者さんの不安を和らげることになるのです。ことばも説法もいらないのです。だから、医療者という道を選んだからには、自分の死のことを時々考えていなければならないのです。うちの職員には折に触れて、そう申しております。
 やはり自分らしく、それこそ死の直前まで希望を持って生きていければ、道端で死んでも、どこで死のうといいのです。希望を持つことが大事なのです。それは、常に「希望のある死」です。その希望は、健康な状態に戻るという希望ではなくていいのです。今日よりも明日という感じです。そういう希望を持ち、死を考えている人たちが周りでサポートすれば、それが一番良いわけです。
■今後の医療の方向性
 今後の医療は、ボディー(身体性)・マインド(精神性)・スピリット(霊性)、合わせて人間まるごとに近づけていくことが課題だろうと思っています。ホリスティック医学へ向かうという流れの中で、医療者はどういうこころがけが必要か。それはもう過去のように、技術と知識を持ったひとりのプロフェッショナルとして、それを持たないアマチュアの患者さんに対していくというやり方はもう全く通用しなくなるでしょう。
 ホリスティック医学は機械の修理と違います。相手のマインドとスピリットを高めるために、こちらのマインドとスピリットをもってやらなければいけません。そういう医療になってくるわけです。患者さんの希望をサポートするようなパワフル(powerful 力強さ)さと、相手の痛みが徹底的にわかるバルネラブル(vulnerable 弱々しさ) さを兼ね備えていることが要求されます。これこそ、本当の癒し人ですね。そのパワフルでバルネラブルであるためのもう一つの条件が、いつも死のことを考えているということです。自分の死に思いがいかないと、本当のパワフルとバルネラブルは出てこないのではないでしょうか。「メメント・モリー (memento mori 死を想え)」というラテン語を引用して“PVM”(パワフル、バルネラブル、メメント・モリー)という3つが、これからのホリスティック医学というか、医療の流れの中での医療者の条件と言えるでしょう。
(文責:親鸞仏教センター)
※詳細内容は、『現代と親鸞』第2号に掲載しています。
帯津 良一(おびつ りょういち) 医師
1936年生まれ。61年、東京大学医学部卒業。東大病院第三外科医局長を経て、現在、帯津三敬病院名誉院長。医学博士、調和道協会会長、日本ホリスティック医学協会会長。著書に『現代養生訓』『〈いのち〉の場と医療』『〈気〉と呼吸法』(いずれも春秋社)ほか多数。また、『アンジャリ』第2号に「いのちの問題」を執筆いただいている。
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