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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 「現代と親鸞の研究会」の第4回目は、2002年5月14日、アルカディア市ヶ谷(千代田区)において、精神科医の高橋紳吾氏を迎え、開催した。人間性が喪失したといわれる現代にあって、さまざまな人々が存在の不安を抱えながら、救いを求めてさまよっている。なぜ人はカルトに魅せられるのか? 現代の時代状況とカルトに入信する人たちについて、カルト問題を専門に取り組んでおられる高橋氏に語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
現代社会とカルト

精神科医 高橋 紳吾
■カルト問題とは何か
 「カルト問題とは何か」ということについて、我々はこれを宗教問題とは捉えておりません。しかし、まったく宗教と関係がないかと言えば、そういうことではないので非常に難しいところです。宗教の名をかりて、ある種のテクニックとパワーと詐術(さじゅつ)を使って、カルトのメンバーにし、自由にあやつって、結局、救いを求めて入った人たちを餌食にして、さらなる被害をもたらすというグループと考えています。
 カルト問題は、二重の意味での苦しみがあります。餌食にされるという問題だけではありません。詐欺であれば、加害者を裁判にかけることで一旦けりがつくわけですけれども、カルト問題というのは、カルトから抜け出ても、最初にあった心の問題というのは、まったく解決されないまま残っているという、二分節の問題になっているのです。
■カルトを生む背景
 オウムのサリン事件もそうですが、最初から悪をなそうと思って入信する人はいません。非常に心優しい人たちが多くて、人を何とか救済したいと思うようになるわけです。もともとは自分の心がつらくて、カルトに惹(ひ)かれていき、「あなたの役割は、修行をして衆生を救済することだ」と言われると、モチベーションが高まり、非常に熱心にワークをするようになることがあるわけです。  では、どうしてそういうことが起こってくるのかというと、いわゆるマインドコントロールの問題になります。カルトに入る若者たちは特殊ではないだろうか、といった素人論議は数多くあるのですが、実際には特別な人がカルトに入るわけではなく、ややもすれば、我々がオウムの信者になっていたかもしれないような、そんな事情があるのです。  現代の若者たちは、欲しいものは何でも手に入り、生活苦とは無縁です。しかし、物の貧困は消滅しましたが、新たな貧困が心の領域に点滅しているのです。つまり、心の貧困です。それからシステム社会という、一つの歯車になってしまう社会ですので、代替えがきくという意味では、「かけがえのない存在」であるということを認識しづらくなっているということです。そういう「かけがえのなさの喪失」が若者を宗教の方へ向かわせていくのです。  現代の若者が持つ未来のイメージは、決して明るくありません。地球環境破壊、政治不信、個人のレベルでも未来はバラ色とは言えません。就職しても、稼いだ金を消費するだけの「消費機械」以外の何者でもない、システムの一部でしかないという実存的な危機意識があります。  さらに現代は、自由の獲得と引き換えに、価値観の多様化と言えば聞こえはいいのですが、要は、倫理やビジョンの欠落した、悪しき個人主義的な社会へと地滑りを起こしています。そこには、かつての全共闘世代が選択したような単純な社会変革運動へと向かう凝集力はない。これは何も日本に限らず、先進国の間ではすでに感じられていることですが、「自分は何者だろう」「自分はどこから来てどこへ行くのだろう」という根源的不安を引き受けてくれる社会的な装置がないのです。
■入信動機とカルトの救済論
 入信する個々人は、すばらしい欲求をもっています。カルト側はそれを利用して、それぞれの欲求を満たす「救いという名のエサ」をまいて入信させていくのです。
 入信者がもっている欲求は四つに大別できますが、それぞれに応じたカルトの救済論があるのです。  まず、「自己変革欲求」に対してです。コンプレックスをもった者に対して、カルト側は、悩みが解決できるような治療的・訓戒的メッセージを与えます。二つ目に「自己高揚欲求」のある者に対し、人生における有能感を与えて、生きがいや社会的貢献といった人生の目的や意義を説明し、生きていく上で見習うべき価値のあるモデルを提供するなど、自己実現的メッセージを与えます。三つ目に「認識欲求」のある者に対して、特に超能力、オカルト、理想的な家庭や世界、歴史の法則性や世界の終末などについて理解したいという動機づけをします。そして、四つ目は「親和欲求」です。これが一番多いのですが、親密な仲間集団を求める欲求が満たされていない者に、孤独感をいやし、真に心を開いて語り合う場所と人を提供するのです。
 以上のような入信動機パターンからみてとれるのは、若者が自己の葛藤を処理しきれず、ひそかに孤独を感じ、「どう生きるべきか」と呻吟(しんぎん)している姿なわけです。つまり、生きづらいと考えている若者が片方にあります。それとセットになっているのがカルトの世界観で、これが救済論になってくるのですが、「ビジョンを生きる」「クリアになる」「ステージをあげる」「真の愛」など、若者を惹きつけるキャッチフレーズが用意されています。
 そして、問題は「人生を一回きりのものとは考えない」ということです。「前世や過去世での『罪障』や『古い傷』を消滅させたり、クリアにすることによって『真我』や『永遠の魂』に到達し、来世や天国で救済を受ける」と教えるのです。これがないカルトはありません。
 すばらしい欲求をもって入信したものの、まったくちがう方向に行ってしまう。脱会しても心の問題は残されたままです。こういったカルト問題に対する解決、真の救済に対して、皆さん(真宗)の出番が期待されています。ぜひとも力を貸していただければというふうに思うわけです。
(文責:親鸞仏教センター)
※詳細内容は、『現代と親鸞』第3号に掲載しています。
高橋 紳吾(たかはし しんご) 精神科医
1952年、広島県生まれ。東邦大学医学部大学院卒業。東邦大学医学部精神神経科医局長を経て、ハイデルベルグ大学精神医学教室に留学され、比較宗教病理を研究。現在は、東邦大学医学部精神神経科助教授、日本脱カルト研究会代表理事。著書に『図解 洗脳撃退マニュアル』(同文新書)『超能力と霊能者』(岩波書店)などがある。また、『アンジャリ』第3号に「若者と宗教−カルトの現場より−」を執筆いただいている。
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