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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 「現代と親鸞の研究会」の第5回目は、高橋紳吾氏(精神科医・日本脱カルト研究会代表)のカルト問題に関する問題提起を受けて、2002年7月9日、親鸞仏教センターにおいて、実際にカルトの入信・脱会経験を持つ山藤純子氏(30歳・仮名)をお迎えして開催した。  特に今回の研究会では、現代の若者が何を悩み、何に苦しんでいるのかを、生の声を通してあらためて学び、それを通して親鸞の教えを現代の言葉で語りかけるための手がかりにしたい、という願いから開かれたものである。ここにその一部を紹介する。なお、本人のプライバシー保護のため仮名を用いた。(本多雅人)
若者の不安

医師 山藤 純子(仮名)
■カルト入信の動機
 カルト入信のきっかけとなったのは、今から10年ほど前になります。当時、医科大生だった私は、専門分野の勉強が大変になったうえに、クラブ活動の人間関係で気を使い、家庭内では年老いた祖父母の面倒などで、あれもこれもやろうとして疲れ果てていました。このような状況から抜け出したいと思うと同時に、「自分とは何だろう」と考えるようになりました。
 そんな時、ある駅前をうつむき加減で歩いていると、男の人に「手相を見せてもらえませんか?」と声をかけられました。軽い気持ちで見せたところ、「繊細な人なんですね」とか「今、何か悩んでいることがあるのですか。近くに先生がいるから占ってもらうといいですよ」と言われました。自分にピッタリのことを言われたので気になり、「もし、変なところだったら、逃げてくればいい」と思って行ってみたのです。
 ふと気づいてみると、先生と呼ばれる女性の前で、親にも友達にも話していない自分が抱えている悩みを、涙を流しながら一気に話している私がいました。それで、「ここは宗教ではありませんから安心です。ここで学べば、自然と問題が解決して理想の自分になれますよ」と言われて、「じゃ、ちょっとやってみようかな」と思ってしまったのです。その時の私の状況は、藁(わら)にもすがる思いというか、誰かにどうにかしてほしいという私だったのです。
■カルトの手口
 そこでは、教義についてのビデオを観たり、講義を聞いたり、合宿もしました。合宿では、講師の人から同じような話を、何回も何回も繰り返し聞かされ、徐々にそこにいる人たちと仲良くなっていきました。しばらく学んでいくうちに、「実は、ここはA教団です」と打ち明けられました。その時、私は鳥肌が立ったことを覚えています。世間で、カルトのことがいろいろと言われていたころで、すごくショックだったのです。でも、自分ではとてもいいところだと思い始めていたので、どうしてこの教団に対して反対派の人が出たり、マスコミなどが騒ぎ立てるのか、よくわかりませんでした。でも、自分で納得できるよう、私は学び続けました。
 A教団では、「自分がいいと思うのだったら、その道を信じて突き進みなさい。反対派の人の意見やテレビや本などは、一切見てはいけません」とも言われました。ただ、疑問に思ったことは質問しましたが、「それは、学んでいくうちにわかるんですよ」などと言われ、一方で、曖昧にされたというような体験でした。
 正確に言うと、私はA教団の正会員ではなくて、その一歩手前だったのです。だから、何かちょっと違う道に行っているようにも思ったので、教団の人たちだけの話を聞くのではなくて、反対派の人の意見も聞きたいと思って、本を読んだり、情報を集めたりしました。その中で、A教団のある元信者の体験手記を読んで、大変驚きました。というのは、正会員になったその元信者が入信していく体験と、自分の体験が、本当によく似ている経路で、それがマニュアル化されていることを知り、大きなショックを受けました。
 その後、A教団を脱会した反対派の方々とお会いする機会を得ました。反対派の代表者の方は、多くの人たちを脱会させた人でした。話を聞くうちに、間違いなくそこがA教団であると確信し、「脱会しなくてはいけない」と、そこで初めて自分で決めて、次の日から行かなくなりました。自分からは行かなくなったけれども、もちろんA教団側の人は納得しなくて、いろいろとアプローチをして来ましたが、「もう、この人に何を言っても聞かない」と伝わったのか、それからは何も言って来なくなりました。
■解決しない心の問題
 こうしてA教団を脱会したのですが、根本的に問題が解決したわけではありません。その後も、また同じことを繰り返すというか、友達から「自己啓発セミナーに参加してみないか」という話を持ち込まれました。私は自分の体験から、「きっと、このセミナーもカルトだな」と思って、ずっと断り続けていたのですが、結局、私は、「本当の自分とは何なのか」「本当の自分はどうしたいのか」ということを知りたくて、そこに参加してしまったのです。
 どうしてそういうことを繰り返すのか、よく考えてみると、私自身、自分に満足していなかったり、「こういう自分になりたい」と思っていながら、その方法が見つからず、常に理想を追い求めていたのです。現在の自分というものをきちんと受け入れずに、ただ理想から今の自分を見ているわけですから、とても苦しみました。
 例えば、A教団では「教団に通っていることは家族には黙っていた方がいい」と言われました。しかも、入信する時は、「自分の一番大切なものを捨てて来なければいけない」ということがあって、それが家族であったり、自分の財産であったりするわけです。A教団でも自己啓発セミナーでも、いつも自分の家族を脇に置いてしまっているんですね。だから、親や財産を全部捨てて、いきなり入信してしまうから、当然、家族は驚いてしまいます。
 私は、目の前の家族をまったく大事にしていなかったことに気づいてからは、とにかく医師の免許を取ろうと決めて、自己啓発セミナーとも縁を切りました。現在、医師となった私の生活もいろいろな問題を抱えています。そして、「自分とは何だろう」という根本的な問題は、まだ解決していません。実は今、自己啓発セミナーではない、別のセミナーに通っています。これから先、どうなるかわからないですけれども、とにかくいろいろなことを学び、体験して、自分が創造する家族、仲間たち、それが社会まで広がり、大げさに言えば、日本になって、世界になってと広がっていけばいいと感じている自分です。
(文責:親鸞仏教センター)
※詳細内容は、『現代と親鸞』第3号に掲載しています。
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