親鸞仏教センター
お問い合わせ
 
「現代を生きる人々」と対話するために
HOME親鸞仏教センター概要アクセスサイトマップ
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内研究員一覧
 HOME > 研究活動報告 > 現代と親鸞の研究会
研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 昨年(2002年)11月8日、東京新阪急ホテル(中央区)において、聖路加看護大学助教授の森明子氏を迎え、「親鸞と現代の研究会」を開催した。
 ケアする側とケアされる側という両面から生殖医療の問題に取り組まれ、その問題をとおして人間としての生き方を問い続けられている森氏に、生殖医療の現状と問題を語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
生殖医療といのち

聖路加看護大学助教授 森 明子
■生殖医療の現状と問題−患者と医療のズレ
 百人に一人は体外受精で生まれているという時代になり、大変多くの人たちが不妊治療を受けておられますが、生殖医療に関するさまざまな問題点が指摘されています。
 その一つとして、患者さんが医療に望むことと、医療が患者さんに提供しているものとのズレが挙げられます。誰も、初めから自分は不妊であるとか、生殖補助技術を受けようと思って病院には行きません。そのあたりを、医療サイドとしてはよく理解する必要があります。やはり、患者さんの立場に立ったガイドラインが必要だと思います。検査方法や手順を説明するだけでは不十分で、どういう検査結果が出る可能性があるのか、そして、結果からどういう治療があるのか、また、今後の見通しなどです。
 精神的ストレスや時間的コスト、治療が生活に与える圧迫感などは、医学的知識を勉強するだけではわかりません。心理的な側面も踏まえながら丁寧な応対が必要です。そういう意味で、看護者の責任は非常に大きいと思っています。
■クライシスとしての不妊
 人にとって、不妊とはどういうことなのでしょうか。私たちは親になること、親になれる存在(parental identity)であるということを持っていますし、産む性、産ませる性を持った存在(sexual identity)であるということも持っていると思います。ですから、不妊によってそういうものが脅かされるということです。これは、人生における一つのクライシス(crisis 危機)になり得るということです。そういうクライシスの心理として、「何で、私たちがこういう目に遭わなければいけないのか」という怒りや悲しみと同時に、罪意識や孤独感が生じます。これらの感情が、うまく解決されていかないとデプレッション(depression)、つまり、鬱(うつ)になったり、コントロールを失ったりします。特に、不妊に特有なものとして挙げたいのが孤独です。人に話せないし、付き合いにくいということが出てきます。
 それから、一番重要なのは、夫婦間の違いとかズレの問題です。子どもの誕生を望む気持ちの強さに違いが出たり、検査治療から受ける負担の差ということがあります。また、夫婦間で不妊治療に対する考え方や方針が違いますし、不妊に対する感情や対処の仕方も違います。さらに、相手に対する愛情や思いやりです。思いやっていて愛情があるのだけれども、そうではないというふうに相手が受け取ってしまうところがあると思います。このようなところで、態度や行動やコミュニケーションにすれ違いが生じてくるのです。
■私の考える「不妊ケア」
 生殖補助技術は、よく生殖の過程を分断し、分離すると言われますが、そのことによって新しいいのちが生まれてくるので、私は、この技術を「いのちを紡ぐ技術」であると思っています。技術それ自体は、極めて生物学的であるし、技術的な行為だと思いますが、それを受ける人にとっては、見事に人間性が疎外される問題をいくつも抱えていると思います。
 それで、ヨーロッパの学会が最近、不妊カウンセリングのガイドラインを出しました。そこでは、「患者中心のケア」ということを述べています。医療チームのすべてのメンバーに、いつでも期待される心理社会的ケアとは、「患者中心のケア」ということです。「患者中心のケア」とは、患者さんが生物学的な存在としてだけではなく、一人の人間として理解されることを保証するということです。そのことが、医療者とのよいコミュニケーション、よい人間関係を築いていくと思います。
 私の考える「いのちを大切にした不妊ケア」を三つ挙げたいと思います。まず一つは、人としての個人の歴史、人生の文脈を大切にするということです。そして、そこに人類の歴史も含めて、個人だけではなく、人間として綿々と繰り返されてきた生殖の営みということを考えなければいけないと思います。やはり、遺伝子レベルの問題もありますので、そういう意味でも、もっと長い目で捉えていく必要があると思っています。
 二点目は、人と人との関係を大切にすることです。人と人という時には、まず夫婦です。不妊ということで、夫婦の関係が壊れるようなことがあってはならないと思います。それに加えて、生まれてくる子どもと親との関係です。夫婦だけの問題ではないということです。子どもが絡んできますから、親子の関係も見ていかなければなりませんし、また、患者さんと医療者の関係も非常に大事です。
 三点目には、ごく一般的なことかも知れませんが、人の、物事を知る力、物事を行おうとする力、物事を感じる力を大切にするということです。特に、治療を受ける場合、女性が圧倒的に多いので、女性の力というものを大切にしたいと思っています。体の仕組み、あるいは治療の原理を知る力を患者さんは持っていると思いますので、患者さんに対する教育は、非常に重要だと思います。特に、不妊の治療は、意志決定ということがいつも付いてきますので、物事を決めていく、意志決定をしていく力をサポートしていくことも大切です。さらに、何よりもまず自分を大切にしてほしいということがあります。自分の気持ちを、そして、自分自身を大切にすることが、生まれてくる子ども、あるいは配偶者を大切にすることにもつながると思います。
(文責:親鸞仏教センター)
※森 明子氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第4号(12月1日号)に掲載しています。
森  明子(もり あきこ) 聖路加看護大学助教授
1958年、名古屋市生まれ。聖路加看護大学大学院博士前期課程修了。1998〜2000年度厚生科学研究「不妊治療を受けている患者・家族のための看護支援ガイドラインの作成とネットワークの構築に関する研究」主任研究者。1999年、日本不妊看護ネットワークを設立し、現在、代表を務められる。2001年3月、「不妊患者支援のための看護ガイドライン」を作成。著書に、『母性看護学概論』(医歯薬出版)などがある。また、『アンジャリ』第3号に「生殖医療といのち」を執筆いただいている。
Backnember ページトップへ
公開講座 親鸞思想の解明 現代と親鸞の研究英訳『教行信証』研究会
清沢満之研究会 「三宝としてのサンガ論」研究会
「正信念仏偈」研究会源信『一乗要決』研究会聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会
近現代『教行信証』研究検証プロジェクトインタビュー
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内バックナンバー一覧
親鸞仏教センター
MAP
親鸞仏教センターTwitter親鸞仏教センターfacebook

親鸞仏教センター [真宗大谷派]<br>〒113-0034 東京都文京区湯島2-19-11
TEL 03-3814-4900 
FAX 03-3814-4901 
mail:shinran@higashihonganji.or.jp
 
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます
Copyright©The Center for Shin Buddhist Studies. All rights reserved.
ホーム 親鸞仏教センター概要 講座のご案内 スタッフ紹介 バックナンバー一覧 リンク サイトマップ アクセス