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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2003年2月12日、東京ガーデンパレス(文京区)において、社会学者の春日キスヨ氏を迎え、「現代と親鸞の研究会」を開催した。
 春日氏は、欲求が即座に満たされる今日の時代を「充足の時代」と押さえ、現代の若者の生きがたさやひきこもりの問題、さらに、超高齢者社会のなかでの介護の問題などについて、「家族」という視座で、一人ひとりがどう向き合っていくべきかについて、語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(藤原正寿)
いまの家族、これからの家族

安田女子大学教授 春日 キスヨ
■現代の若者の生きがたさ
 現代の若者の生きがたさには、二つの側面があると思います。一つは、何のために、どこに向かって生きていけばいいのかという、目的や課題が見つからない生きがたさ。もう一つは、人とのつながりに確信が持てない生きがたさです。
 多くの欲望が即座に満たされる現代では、自分の手が届かないものでないと、目標にならなくなります。非常に差異性の強いものしか目標になり得ないのです。モノが溢れる充足の時代そのものが、目的志向的・課題志向的生き方を難しくする側面を持っているのです。
 だからこそ、人間関係の中で受け容れられることが非常に重要になってきます。本来、人間関係というものは、何かの目的や課題を達成するためにつながり合うときに、生き生きとするものです。しかし、受け容れられることそのものが目的とされるとき、関係に、過剰に敏感になり、傷つきやすくなります。過剰な自意識へのとらわれが、そうした中で強くなる。それが、若者たちの現代の状況ではないかと思われます。
 では、過剰自意識から解放されるためには、何が大切なのでしょうか。「自分は自分であっていいのだ」というような、本来的な意味での自己肯定感が、非常に重要だろうと思います。
■「家族の危機」の本質
 よく「家族の危機」というふうに言われますが、では一体、「家族の危機」とは何でしょうか。絶対的に受容されている自分、つまり、「自分は自分であっていいのだ」という自己感覚を培う基盤としての家族が、非常に脆弱(ぜいじゃく)化していることではないでしょうか。それは、親が子どもをかわいがらないからではなく、親が子どもを愛し、保護しつくす力を持ったがゆえの危機なのです。豊かな社会のパラドックスとも言えます。  学校化社会の親は、勉強ができる子は「よい子」という価値のみで子どもを評価し、「何の取り柄もないけれども、あなたが私たちの子どもとして生まれてくれたことがありがたい」といった形の、絶対的受容基盤を失っていきました。さらに、これだけモノが溢れる社会になると、教育熱心な親であればあるほど、かえって「子どもを甘やかしてはいけない」「我慢できる子に育てなくてはいけない」という、教育的な配慮が先に立つことになります。モノを一つ買うごとに、「もう持っているのに」という否定形の関係をつくってしまいがちになります。「買ってやりたい」からではなく、「のに」になるわけです。そうなると、モノを与えられる喜びは失われ、逆に、モノをねだるたびに「我慢のできない子」という形で、ネガティブなメッセージが子どもに伝わることになります。
 また、豊かなモノ社会では、「勉強したら買ってあげる」というように、モノが子どもの心を操る手段として使われがちです。こうしてモノが溢れることで、かえって「ダメな子」という自己感覚や、「私は親から見捨てられるのではないか」という不安が、子どもに植えつけられていく側面があるのです。豊かな社会に育った子どもたちが本当に欲しいのは、実はモノではなく、親に自分が絶対的に受容されているという感覚なのです。そういう感覚や実感を子どもが伝えようとしても、なかなか親には伝わりにくいのです。日常的な、本当に私たちが良かれと思い、親の愛だと思ってつくっている教育的な配慮が、実は、子どもの自己肯定感覚の根元を崩していく側面を持っているのです。
■「これからの家族」−介護と家族−
 豊かな社会に育った子どもたちが、親の介護を担わなければならない時代がこれからの家族になってきます。2025年には日本の人口の4人に1人が、さらに、2050年には約3人に1人が65歳以上の高齢者になると言われています。しかし今、それを支える家族基盤が大きく変化してきています。国の統計では、たとえ元気であっても、看守りが必要であろうと思われる85歳以上の年齢層で見た場合、1975年頃までは8割の人が子ども世代と同居するという形態でした。それが、年々同居の割合が減り、2010年には54.6%になります。シングルで生きる人も増えています。
 さらに、高齢者介護をめぐる子どもの考え方も、1980年代半ばを境にして大きく変わってきました。それまでは、老人扶養についての考え方は、「子どもとして当たり前の義務である」「よい習慣だ」という人を合わせると、過半数を超えていました。ところが、1980年代後半以降は、「施設・制度の不備ゆえ、止むをえない」「よい習慣ではない」という人たちが増える傾向にあります。
 また、一人っ子・二人っ子世代では、次のような問題も出てきています。1960年代以降生まれでは、女性の4割以上が男兄弟がいないのです。女性たちは、夫の親以上に自分の親に対する責任義務を負わねばならない時代になっているのです。日本の伝統的家族であった「家」制度的なあり方は、人口学的にもその基盤を失い、夫方・妻方双方につながる双系的なものに変っていくと思います。
(文責:親鸞仏教センター)
※春日キスヨ氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第4号(12月1日号)に掲載しています。
春日 キスヨ(かすが きすよ) 安田女子大学教授
1943年、熊本県生まれ。九州大学大学院教育学研究科博士課程中退。社会学(家族社会学、福祉社会学)を専門に、父子家庭、不登校、障害者、高齢者介護等の問題を追究される。著書に、『介護問題の社会学』『家族の条件−豊かさのなかの孤独』(岩波書店)『父子家庭を生きる−男と親の間』(勁草書房)などがある。また、『アンジャリ』第4号に「豊かな社会と『家族愛』のパラドックス」を執筆いただいている。
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