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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2003年9月18日、東京ガーデンパレス(文京区)において、教育評論家の尾木直樹氏を迎え、「現代と親鸞の研究会」を開催した。
 競争主義がはびこる教育現場のさまざまな問題を鋭く捉え、新しい時代にふさわしい、子どもと大人と地域の共同参画を主軸とした教育改革を提唱する尾木氏に、「今日の子どもと教育の危機とは」をテーマに語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
今日の子どもと教育の危機とは

教育評論家 尾木 直樹
■競争主義と学力低下の議論
 教育界のあらゆる領域で競争が激しくなっています。では、いまの競争主義というのはどういう状況かということですが、例えば、都立の進学対策校であれば、「国公立難関大学100人以上、現役合格率60%」と、数値目標を掲げさせられるわけです。そのために、そこに生徒をあてはめていき、それによって、教師、学校が評価されていくのです。つまり、成果主義になっています。一定の到達レベルに全員が達するための競争というのであれば結構なことだと思いますが、他者と差をつけて自分が一位になることを喜ぶような競争というのは、コップのなかの争いであって、ほとんど意味がありません。むしろ、その競争の結果である順位に意味が置かれてしまい、そのプロセスで習得されるものが薄まってしまう危険性があるように思います。両者には相当な違いがあって、差別化の競争は非常に危険です。
 数値目標を掲げた成果主義が、こんなに蔓延してきてしまった背景には、“学力低下”への不安があります。しかし、いま日本の子どもたちの学力は、国際的にいうと依然としてトップクラスです。しかし、学力問題で重要なのは、成績ではなく、学習意欲というか、学問研究に対する夢や希望や情熱です。ところがこの点では、どのデータを見ても日本は最下位です。それは、学習時間の低下ということにも、端的にあらわれています。経済的な不況のなかで、これまで高度経済成長を支えてきた学歴社会が崩壊し、私たちのころのような学歴のメリットは、ほとんどなくなってしまったからです。しかし、興味のあることを勉強したいと思っている子どもたちは実に多いのです。ですから、「21世紀の現代にふさわしい学力とは何か」をしっかり議論することが大切です。
■パートナーシップの構築
 現代の若者たちのベクトルは“未来”に向いていません。“自分”のほうを向いています。未来のために生きるのではなくて、いまが大切なのです。いまが勝負なのです。つまり、今日が楽しくて自由にのびやかに過ごせれば、きっと明日も楽しいかもしれない、明日も楽しかったら1年後も楽しいかもしれない、というように、「いまから未来へ」とつないでいくわけです。ベクトルの方向が私たちのころとは逆なのです。ですから、「対極を生きる子どもたち」という言い方ができるのではないかと思います。しかし、ベクトルが逆だということがわかれば、今日の若者たちもそれなりに的確な生き方をしていると理解できます。
 いまは、先行きのわからない不安な社会状況ですから、いまを楽しく生きるという考え方も、当然、理解できるわけです。ただ、その楽しさのなかに、未来を切り開いていく楽しさというものをもっていなければ、それは単なる刹那主義に陥るということを、私たち大人は十分に伝えていく責務があると思います。
 それが十分にできていない現段階で、いま、いろいろな少年犯罪が起きているわけです。だから、成績のいい子が事件を起こしています。ある意味で、それだけしわ寄せが成績のいい子どもたちに来ているのだと思います。これでは、一生懸命にがんばっている子どもたちは爆発もします。思春期の、特に17歳で将来の進路を決めていくときに、例えば大学に入るとか、就職にどこを選ぶかというときに、社会が見えてくると同時に、自分自身も初めてリアルに見えてくる。そこでの絶望感や挫折感にはとても大きいものがあります。だから、そういう意味では非常にわかりやすいのです。しかもそういう目で見たときに、すごく現代の子どもたちが理解できると思います。
 このような若者たちに、大人たちが何かを教えていくとき、大人自身が、いま本当に自信をもって教えるものを、政治的にも、文化的にも、経済的にも完成していないと思います。それならば、私は「パートナーシップ」と言うのですが、若者たちのパワーをもらいながら、いっしょにこの国を、あるいは地域をつくろうではないかという提案をしています。学校であれば、「先生たちも一生懸命に考えるけれど、君たちも提案してほしい。いっしょに運動会を成功させようじゃないか」というような、共同で創造する学校づくりということです。いわゆる「子ども市民」、もっと大きいスケールで言えば「地球市民」というような言葉がよく使われますが、そういう感覚で捉えるならば、現代では、子どもも大人もある意味で対等であろうということです。
 日本の子どもたちの自己肯定心情(セルフエスティーム self-esteem)は極端に低いと言われています。自己肯定心情が低い子どもが、お父さんやお母さんを愛したり、いじめられている子に同情心や正義感から「やめなよ」と言ったり、あるいは困難な課題に挑戦する意欲などが湧いてくるはずがないのです。自分を愛していない子が、他者を本当に愛するということはありえないのではないでしょうか。
 大人と子ども、社会と子どもたちとの新たな関係性を構築することによって、子どもたちの自己肯定心情が高まってくれば、自己責任感も出てくるし、そこから、参加した大人や社会に対する責任感や信頼感がもてるようになるのではないでしょうか。そうなってはじめて、本当の意味でモラルを引き継ぐことができるのだろうと思っています。
(文責:親鸞仏教センター)
※尾木直樹氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第5号(6月1日号)に掲載しています。
尾木 直樹(おぎ なおき) 臨床教育研究所「虹」所長
1947年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業。法政大学教授、早稲田大学大学院客員教授。高校・中学校教師として22年間に渡り、創造的な教育実践を展開。また講演、テレビコメンテーター、新聞・雑誌への執筆等で活躍されるほか、実践的でタイムリーな調査・研究活動とともに、子育てセミナーの開催、教育相談、カウンセリングにも取り組まれている。著書に、『「学力低下」をどうみるか』『「学級崩壊」をどうみるか』『学校は再生できるか』(以上、NHK ブックス)、『子どもの危機をどう見るか』(岩波新書)、『競争より「共創」の教育改革を』(学陽書房)、『子どもの目線』(弘文堂)など多数。また、『アンジャリ』第5号(親鸞仏教センター)に、「今日の子どもと教育の危機とは」を執筆いただいている。
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