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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2003年12月1日、ホテルニューオータニ(千代田区)において、ジャーナリストであり、早稲田大学大学院教授の筑紫哲也氏を迎え、「現代と親鸞の研究会」を開催した。  グローバル化の問題点を鋭く捉え、多元的な生き方を提唱する筑紫氏に、「現代の世界の問題をどう見るか」をテーマに語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
現代の世界の問題をどう見るか

ジャーナリスト 筑紫 哲也
■グローバル化を問う
 スローライフの提唱

 9・11(2001年)のテロが起きた大きな背景に、アングロ・サクソンの民族的色彩が非常に強く出た、グローバル化というものがあったと思います。グローバル化は、資本主義の究極形で、キリスト教が非常に大きなファクターとなって生み出されました。それが、ものすごい勢いで世界を支配していくという流れに対して、イスラム教の世界から、一番暴力的なテロリズムというかたちの反応が起きたわけです。
 グローバル化に反対することの中身はいろいろありますが、グローバル化を端的に言うと、「人」「モノ」「金」「情報」が、国境を越えて飛び交うという状況です。それを推進するために、ITを含めた、先端の科学技術が大きな貢献をしていくわけです。その先端技術の速さは、いろいろな部分で表現されていますが、例えば「食」です。食べるということにおいて、まさに世界で、「ファーストフード」というものが速さを具現化してきました。これに対して、いま「スローフード」という運動が世界に広がっています。ここにもやはり、グローバリズムがめざしている、単一方向に進むということに対する、一つの異義申し立てがあると思います。
 私が、「スローライフ」を提唱した大きな理由も、やはり9・11にあります。21世紀に、滔とう々とうと一つの巨大な超帝国ができあがって、しかもグローバリゼーションがものすごい勢いで進められていくなかで、「私たちは、どうやって生きるのか」ということが問われる時代にいるわけです。その勢いに対して、デモを組織したり、あるいはイラクの派兵に反対するというような、いわゆるプロテスト(protest)、抗議するということが大事であることは確かです。
 しかし、もう一つ大切なのは、プロテクト(protect)です。つまり、世のなかのさまざまな変化のなかで、それに流されないように、わが身を守るということも大事ではないかと思います。
■自分たちで選ぶ大切さ
 ところが、「ファーストがいけないから、スローなんだ」ということであれば、これは合わせ鏡に過ぎません。9・11というのは、ある意味で非常に似た者同士の争いだと思うのですが、その理由は、イスラム教世界とアメリカのぶつかり合いは、宗教が一神教であるだけではなく、似ているところがあるということです。イスラム教の原理主義者たちが、「自分たちに正義があって、アメリカ帝国は悪だ」と言うのは、入れ替わっているだけの話です。ですから、「ファーストの反対が、スローだ」と言っているだけでは、単なる入れ替わりに過ぎないし、勝ち負けで言えば、はっきり言ってスローが負けます。
 速くて悪いものの最たるものは、戦争でしょう。国際的に皆の意見を集約することなく、いきなり武力という手段で問題を解決しようとする。しかも戦争とは、敵が撃つ弾よりいかに速い弾を撃って相手を殺すかということです。これはまさに、「速さの悪さの権化」です。しかし、遅くて悪いものも結構あります。その最たるものは、日本のお役所仕事であるとか、日本におけるさまざまな改革もそうかもしれません。問題は、速くていいものは何か、あるいは遅くていいものは何なのかです。それを「自分たちが選び取ろう」ということを実践しているのが、スローライフです。
 文明やさまざまな進歩の一番基本に、「それが、人間にとってどうであるのか」というおさえがなければ、それは人間が、進歩と言われることのなかで、逆に奴隷になっていくという仕組みでしかないだろうと思うのです。20世紀には、しばしばそういう部分がありました。戦後の日本の経済成長もそうです。確かに経済が、自分たちが生きるための良い条件を整える手段として必要なことは認めます。しかし、経済は目的であってはならないはずなのに、いつの間にか目的になり、奴隷になってしまいました。
■仏教の果たす役割
 私は、仏教がこれから大きな役割を果たせるのではないか、と考えるようになりました。それは、一つには仏教が多元主義であるということです。
 『仏教が好き!』(河合隼雄、中沢新一共著 朝日新聞社)という本がありますが、この本で一番言いたいことは、仏教は「メタ宗教」(宗教を超えた宗教)ということです。世界の宗教が、ある種の限界をもったり特殊性をもつ、「そういう宗教を超えて、ある共通の普遍性をもち得る宗教がこれから先にあるとすれば、それは仏教であろう」ということだと思います。
 仏教と他の一神教は何が違うかというときに、まさに「非対称」の問題があると思います。ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も、神と人とはまったく別の存在であって、人間がどんなに努力しても神にはなれないという前提の、非対称のなかで成り立っています。仏教では、例えば「師弟同一」というように、「ある境地に達するとだれでも仏になれる」ということで、仏教だけが、対称的な関係を認めていますね。
 グローバル化や超帝国というものが、世界で圧倒的な力をもつ時代に、これからの仏教の果たす役割は、とても大きいのではないかと感じています。
(文責:親鸞仏教センター)
※筑紫哲也氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第7号(2004年12月1日号)に掲載しています。
筑紫 哲也(ちくし てつや)ジャーナリスト、ニュースキャスター、早稲田大学大学院教授
1935年、大分県生まれ。59年、早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社入社。支局勤務を経て、東京本社政治部記者、米軍統治下の沖縄特派員、ワシントン特派員、外報部次長、「朝日ジャーナル」編集長などを務める。89年、朝日新聞社を退社。同年10月から TBS 系テレビ「筑紫哲也 NEWS 23」のメインキャスター。2003年より、早稲田大学大学院公共経営研究科教授。著書に『ニュースキャスター』(集英社)、『情報は誰のものか』『メディアの内と外』(以上、共著、岩波書店)、『この「くに」のゆくえ』『この「くに」の冒険』『乱世を生きよ』(以上、日本経済新聞社)、『総理大臣の犯罪』(サイマル出版会)など多数。また、『アンジャリ』(親鸞仏教センター)創刊号に「21世紀の家族」を執筆いただいている。
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