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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2005年1月17日、東京ガーデンパレス(文京区)において、埼玉大学名誉教授の暉峻淑子氏を迎え、「現代と親鸞の研究会」を開催した。真の豊かさとは何かを追求する暉峻氏に、豊かさをもった生活とは逆流する、現代資本主義社会の問題点について語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
本当の「豊かさ」とは何か

埼玉大学名誉教授 暉峻 淑子
■日本人の貧困な精神構造
 私たちはバブル時代をとおして、人はお金だけで決して幸せになれないし、人間として豊かな気持ちになって生きていけないということに気づいたと思います。これは、日本人にとっていい教訓であったと思っています。
 ただ、お金儲けをどんどんやりながら、同時に心は豊かに、みんなが共存して、自然も含めた周りの人のことも思いやる人間になりなさい、というのは偽善です。なぜかと言えば、例えば、自然環境や他人のことを思っていたのでは、いまのような経済成長はできなかったからです。だから本当に心を豊かにしたいなら、すべてに優先して金とモノを追いかけることをやめなければいけないと思うのです。
 「何のためにお金を儲けるのか」と聞かれたら、私なら、「お金がないために死んでいく子ども、病気が治せない人、飢え死にする人に分けるためにお金は必要です」と答えます。なぜ日本が、経済だけを追いかけていく盲目的な国になってしまったのでしょうか。いまの日本は、国の富を増やして、経済大国にのし上がっていくということと、人間らしい生活を人々が営めるような社会を維持していくということが、まったく別問題になってしまっています。本来、「経済」というのは、よりよい人間関係のための社会をつくることなのに、正反対になっています。
■上下格差を広げる政策
 資本主義社会の一番の問題点は、人間を商品扱いにしているということではないでしょうか。現在は、バブル後の不況を切り抜ける方法として「新自由主義市場経済」が考えられていますが、これは、弱肉強食の社会をつくるということです。「社会ダーウィニズム」と言われて、お金持ちの人間にはもっとたくさんの富を与えて、一般の人には、その富を分け与えない社会をつくろうとしています。現在の経済政策は、国民一般の生活はどうでもよくて、マクロとしての国の富が増えればよく、バブル後の損失が国民の犠牲によって早く埋め合わされるべきだという方策を立てているのです。
 このような状況のなかで、現代の社会はあらゆる面で、意図的に上下の格差をつくり出しています。例えば、教育においても、エリートの学校をつくり、エリート校にはたくさんの補助金も来ます。しかし、これは逆ではないでしょうか。生徒に手取り足取り教えなくてはいけない学校にお金をかけるべきなのに、進学校が何でお金を貰うのでしょうか。
 また、「習熟度別指導」というのも、早い時期にエリートとそうでない生徒を分けて、子どもがそれに不満をもたないように、学校に『心のノート』(文部科学省作成)という冊子を配っています。『心のノート』は、いかにも精神主義みたいですけれど、内容を見ると、あなたが不幸なのも、就職できないのも、高校に落ちるのも、すべてあなたの責任ですということなのです。教育においても、そういう格差を意図的につくり出す社会を何とも思わないという人間の考え方が、とても恐いと思っています。
 税制もそうです。「老年者控除」もなくなります。今後、「勤労者控除」も半分ぐらいに圧縮して、最後は3分の1ぐらいにしてしまう方針です。その控除がなくなれば、当然、税金が増えます。庶民に対する課税です。非正規職員というのは昇進もないし、社会保険もめったに付けてもらえない。解雇されても退職金もありません。
 いまの失業状態というのは、利潤を求める資本家の要求に従って、失業者が故意につくり出されています。いま高齢者のためのいろいろな器機や補助器具などは、本当に足りません。ガン治療の開発とか、エイズの撲滅とか、いろいろと足りないものがあります。ところが、企業は、人間の不幸を軽減する商品の開発よりも、手っ取り早く解雇したり、正規社員からパートに替えたりして、利潤率を上げてきたわけです。働くばかりで、ものを考えない日本人のあり方について問われていますが、やはり不安定にしか働けないということは、人間にとって深く考えたり、計画的に責任ある生き方ができないということです。
■競争社会の歪み
 現在の競争は、富や利潤をどれだけ生み出せるかという、目的に向かっての競走です。それ以外のものはみんな切り捨てられます。競争ほど不自由なものはない。いま学校では、子どもがミスをすることが許されていないのです。ミスを許さない社会はとても恐ろしいですね。
 やはり、日本の社会が変ですね。会社でも、うまく商業の取引契約をまとめてきたとか、会社の利潤に貢献する発明をしたとかということで人を評価するけれども、決して人間性とか倫理観で社員を評価しないのです。
 競争が激しく出てくるのは、資本主義社会になってからでしょう。それが何か人間の本来の生き方であるかのように、学校でも競争、企業でも競争、国と国も競争になってしまっています。でも人間の自然な感性は、競争主義のなかで、どこか納得できないというか、幸せだとは思っていないのですね。やはり、自分自身は欺(あざむ)けないのです。だから、グローバルな資本主義の潮流に乗っているけれども、実は、みんな不幸なのです。社会の流れに乗って、自分もその流れを加速するように励んでいるけれど、みんなどこかで人間が壊れると思っているのです。
(文責:親鸞仏教センター)
暉峻 淑子(てるおか いつこ)埼玉大学名誉教授
1928年、大阪府生まれ。日本女子大学文学部卒業後、法政大学大学院博士課程修了。経済学博士。専攻は生活経済学。専門分野で活躍するほか、政治、経済、社会問題で広く発言をしている。また、NGO・国際市民ネットワーク代表として、旧ユーゴスラビアの難民支援活動も精力的に続けている。著書に『豊かさとは何か』『豊かさの条件』(以上、岩波新書)、『ほんとうの豊かさとは』『なぜ教科書裁判をたたかったのか』(以上、岩波ブックレット)、『豊かさへの接近』(産業統計研究社)、『ゆとりの経済』(東洋経済新報社)、近著に『格差社会をこえて』(岩波ブックレット)など多数。また、『アンジャリ』第8号に「教育を問い続けて」、『現代と親鸞』第9号に「本当の『豊かさ』とは何か」(共に親鸞仏教センター)を執筆いただいている。
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