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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2005年4月6日、東京ガーデンパレス(文京区)において、「朝鮮史から見た日本」をテーマに、朝鮮史研究会会員の岡百合子氏をお招きして、「現代と親鸞の研究会」を開催した。朝鮮史、特に日本との関係史をとおして、われわれ日本人のもつ問題点や新しい視点について、語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(本多雅人)
朝鮮史から見た日本

朝鮮史研究会会員 岡 百合子
■朝鮮と私のかかわり
 当初(1970年代)、私が行おこなっていた朝鮮史の授業は見事に失敗しました。日本の36年間における朝鮮の植民地支配について、日本の悪逆非道なことばかりを扱っていました。それは生徒にとって逆効果だったのです。これは私の学校だけのことではなくて、当時の全国の中・高校生のアンケートの結果ですが、「貧しい」とか「汚い」とか、「いつまでも過去の問題をグジグジ言って、しつこくて嫌いだ」というようなイメージで、南北に関係なく、朝鮮を嫌いだという中・高校生が非常に多かったわけです。
 そのような経験を通しながら、80年代に入って、岩崎書店で子ども向けの『世界各国史』というシリーズ(20ヵ国・20冊)を出すことになり、私が朝鮮史を書くことになりました。それがきっかけとなって退職後、公民館などでの朝鮮史講座への依頼が舞い込むようになりました。私は教員でいたとき、勉強の嫌いな子に歴史を教えるということで、できるだけ話をやさしく、消化しやすいようにするということに何十年も努力してきました。それで今度は、朝鮮史研究者と、日本人でありながら隣の国のことを何も知らないふつうの人との間に立って、朝鮮史を一般に敷ふ衍えんする仕事に自分の役割を見いだそうと思うようになりました。現在の日本人の朝鮮に対する見方は、“韓流ブーム”という現象もあるように、大分イメージが変わったとは思います。しかし、最近再び、竹島問題、教科書問題、靖国問題など、韓日の間が厳しくなりました。でも、これが本来の姿だろうとも思います。
 いずれにしても「朝鮮史から見た日本」を討論するには、朝鮮史を古代からきちんと学んで、朝鮮と日本との間にどういう関わりがあったのかを知らなければ、正しい答えは出ないと思っています。
■歴史を考える姿勢
 次に、私自身の朝鮮史を考える姿勢についてお話します。『朝鮮・韓国の歴史』を書きながら、実は釈然としない思いがありました。ちょうどこの本が出る少し前、「東アジアシンポジウム」という中国、韓国、北朝鮮、日本の学者たちによる歴史のシンポジウムが開かれ、その内容をまとめた本が、比較史・比較歴史教育研究会編『アジアの「近代」と歴史教育―続・自国史と世界史―』(未来社)として出ました。そのなかに、私は「朝鮮史とのかかわりの中で」という文章を書きました。そこで言いたかったことは、私は日本人なのに、朝鮮ナショナリズムに身を寄せて『朝鮮・韓国の歴史』を書いた。例えば、伊藤博文と伊藤を射殺した安アン重ジユン根グンの関係について、「伊藤博文はけしからん」「安重根は英雄だ」ということで書いたわけです。私は、まるで自分が朝鮮人であるかのように、“朝鮮万歳”ということで本を書いたのです。しかし、それでいいのだろうかという思いがあって、ナショナリズムについての思いを述べました。韓国のほうでもいま、ナショナリズムについて新しい動きが起こっていますね。韓国ではこれまで国内がバタバタしてくると、必ず“反日”ということで国内世論を統一しようとしました。それを一番使ったのが、朴パク正チヨン煕ヒの時代でした。しかし、そういう“反日" だけでいいのだろうかという反省が、韓国の、若手の学者のなかから出てきているようです。
 最近、韓ハン洪ホン九グという新しい世代の学者が、『韓国現代史』(平凡社)という非常にいい本を出しました。韓さんは、朝鮮戦争前後の民間人虐殺の真相究明や、ベトナム戦争に行った韓国人が、ベトナム人を大虐殺したことを掘り起こすなどの運動もしている活動家で、第一線にいる大学教授です。その韓さんが安重根と伊藤博文についてふれています。韓国では安重根は英雄です。そして日本では、伊藤博文は千円札になったぐらいですから、愛国者で、明治政府の立て役者、元勲であったことは確かです。
 韓国の人は伊藤博文を仇きゆう敵てきとして、彼を殺した安重根を英雄と言います。日本人は伊藤博文を元勲として、安重根はテロリストだと言います。韓さんは、その溝を埋める以外に日韓の将来はないのでは、ということを言外に示唆しています。それを超える道はどこにあるか。とても難しい問題ですが、私はその一つは“近代”を考えることにあると思っています。伊藤博文がなぜ朝鮮を支配したかというと、これは日本の近代という問題にあります。日本が列強に伍ごして生きていく。中国や朝鮮のような惨めな国にならないためには、朝鮮、中国を植民地にする以外にないという、福沢諭吉らがとなえた方針を日本政府はとったのです。
 伊藤博文はその方針を率先して一生懸命やった人であり、安重根はそれを「けしからん」と言って韓国の独立のために伊藤を暗殺した人です。そうすると、その両方が手を結び合うためには、近代とはいったい何だったのかを、まず明らかにしなければなりません。脱だつ亜あ入にゆう欧おうという日本のやり方、列強の植民地にならないために、アジアの国々を植民地にする、そんな方法しかなかったのか。朝鮮、中国、日本が手を結んで、欧米列強、ロシアも含めて、それらの外圧と抗するという道は果たしてなかったのか。これからの世界、そして東アジアの未来のことを考えるとき、中国、韓国、北朝鮮等と日本がいっしょになっていく方向を探る以外に、溝を埋める道はないのではないか、ということがいま問われているのだと思います。
(文責:親鸞仏教センター)
岡 百合子(おか ゆりこ)朝鮮史研究会会員
1931年東京都生まれ。お茶の水女子大学史学科卒業。1954年から86年まで、東京都の公立中学と高校の社会科教師をつとめる。夫は作家の高史明氏。歴史教育者協議会会員。著書に『中・高校生のための朝鮮・韓国の歴史』(平凡社ライブラリー)、『白い道をゆく旅―私の戦後史』(人文書院)、『いのちの行方』(高史明氏共著、径書房)、『市民がつくる日本・コリア交流の歴史』(共編著、高麗博物館)など多数。また、『アンジャリ』第4号に「朝鮮史と日本史を貫くもの」(親鸞仏教センター)を執筆いただいている。
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