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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2007年1月31日、東京ガーデンパレス(文京区)において、国際日本文化研究センター准教授である池内恵氏をお迎えし、「現代と親鸞の研究会」を開催した。イスラ−ムをめぐるさまざまな問題が、一面的かつ断片的な情報しか伝えられていない現状のなかで、直面している問題の解決には「そもそもイスラームとは何か」という全体像を総合的に把握する必要がある、と主張される池内氏に、「イスラーム教と現代の国際政治」について語っていただいた。ここにその一部を紹介する。(嘱託研究員 本多雅人)
イスラーム教と現代の国際政治

国際日本文化研究センター准教授 池内 恵
■神の言葉としての『コーラン』
 イスラームの問題は、宗教学や政治学や社会学などあらゆる分野に関係していて、一人の人間が一生をかけても、とても取り組めない問題です。また、イスラーム教について議論する際には、主観的な信念と客観的な認識とを切り分けることがなかなか難しい。宗教を相対化し、批判することがイスラーム教の歴史では行なわれていないからです。われわれが考えるような宗教的自由というものは、イスラーム世界にはありません。イスラーム教の観点から言えば、イスラーム教を信じる権利を行使することが一番の自由であると考えるわけです。逆に言えば、信者にはイスラーム教をやめるということはあり得ないということです。
 イスラーム教は、政治と切り離しにくい。さらには、異教徒との権力関係が教義に分かち難く存在する。イスラーム法学の根拠としては、『コーラン』(Qur'an)に遡(さかのぼ)る宗教的規範の典拠があり、そこに基づいた規範と法が根底にあるために、イスラーム教徒と異教徒との関係はそう簡単に、宗教から自由に解釈することはできないということになるわけです。
 『コーラン』が神の言葉であって、それは神からムハンマド(Muhammad)を通じて地上に下された、最後の啓示である。これはイスラーム教徒にとって、信念に基づく真実というだけではなくて、「事実」なのです。『コーラン』が「啓示」であるために、『コーラン』の一つひとつの文言が典拠となります。そして、その『コーラン』の文言を補助するとされる『ハディース』(hadith)、これはムハンマドの話した言葉、あるいは行なった事績を書き記した書物群ですが、これがまた典拠となるのです。『コーラン』と『ハディース』にある文言を解釈することによって、現代の問題もすべて解釈できるとされ、実際に導き出してきているわけです。基本的には一人ひとりの信者が『コーラン』と『ハディース』に立ち返って、常に現在の問題を判断するわけです。『コーラン』に基づく「啓示法」は、近代国家の「人定法」より上位にあります。
■ウンマの概念
 そして、『コーラン』や『ハディース』には、イスラーム教徒の集団対異教徒の集団の関係が宗教思想上、非常に確固とした形で定められている。イスラーム教徒の側では、自らを「ウンマ」(umma)と認識しています。これはアラビア語ですが、翻訳が難しいのです。意味としては、「宗教政治共同体」と考えるしかないと思うのです。その場合の宗教政治共同体というのは、信仰を同じくする不特定の者たちが帰属していると共通して考えている実体、ということになります。  ウンマへの帰属意識によって考えれば、イスラーム教徒と異教徒という二分節によって世界は成り立っている、と認識されます。まずそこが重要です。近代的な宗教観からすると、宗教によって人間を分け隔てするのは、ある意味でよくないのではないかという考えがあるわけですが、イスラーム教徒の側から言えば、人間の根本的な属性というのは宗教であって、イスラーム教徒であるかないかというのは、人間の属性としての最初の出発点であると、当然のように信じられています。これは、大多数のイスラーム教徒が共通して認識しています。  イスラーム教徒にとっては、『コーラン』において正しいとされた行動を行なうことが義務であり、権利となるのです。「ジハード」(聖戦)の思想もその文脈で存在します。イスラーム教団の発展のなかで異教徒を打ち負かしてきた歴史、それは正しい歴史であって、なんら批判されるべきものではないといまも教えられる。ジハードの過程で下された『コーラン』の文言には、かなり攻撃的なものがあるのですが、それも正しいとされます。
■イスラームとの対話
 イスラーム教をめぐる紛争と摩擦というのは、国と国同士の関係というよりは、イスラーム教徒のウンマと異教徒の集団との対立という構図のなかで問題が生じてくるということです。確かに、近代における欧米の植民地主義、パレスチナ問題、湾岸戦争や9.11事件も、信徒の目にはこれに合致するように見えます。イスラーム教の宗教的な理念のなかに、単にイスラーム教徒の生活のあり方を規定しているだけではなくて、異教徒との関係、政治的あるいは軍事的支配といった環境を含む理念がある。このことが問題の重要な要因になっていることから、目を逸そらしてはいけないのです。  いわゆる「グローバル化」と言われている現在の状況から見ると、ある意味で、イスラーム教のこのようなあり方が、非常に適合的な状態になっていると言えるのではないでしょうか。つまり、国と国との関係が、世界のなかでの関係の主軸になるというよりも、むしろそれ以外の個人が行き交い、民族以外の理念で国境を超えて結合する時代になってくると、イスラーム教のあり方はこれに適合していたということになるわけです。そのなかで、ウンマの自己意識も再創造されていると考えるべきです。  結局、イスラーム教徒の側からは宗教と政治を分けにくい。ですから、宗教集団間の関係としての政治的な妥協を行ない、宗教的な解釈では、お互いに対立しない議論の方法、対処の仕方を見いだしていくということが、イスラーム教をめぐるさまざまな摩擦を回避していくために、大変必要なことではないかと思います。
(文責:親鸞仏教センター)
池内 恵(いけうち さとし)国際日本文化研究センター准教授
1973年、東京都に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専攻はイスラーム政治思想史、中東地域研究。2001年、日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員を経て、現職。著書に『現代アラブの社会思想=cd=ba52終末論とイスラーム主義』(講談社現代新書、第2回大佛次郎論壇賞)、『アラブ政治の今を読む』(中央公論新社)、『書物の運命』(文藝春秋、第5回毎日書評賞)、共著に『民族主義とイスラーム』(アジア経済研究所)など多数。
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