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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2009年3月10日、アルカディア市ヶ谷(千代田区)において、国立環境研究所 特別客員研究員の西岡秀三氏をお迎えして「現代と親鸞の研究会」を開催した。
 温室効果ガス排出による深刻な地球温暖化の問題に対し、産業革命以来の人間のあり方、社会構造、ライフスタイル、エネルギー文明など、あらゆるものを見据えながら、豊かで平等な社会を持続していくための「低炭素社会」実現への具体的なシナリオを作成された西岡氏に「持続可能な社会への転換―「低炭素社会」実現に向けて―」をテーマに語っていただいた。その一部を紹介する。(嘱託研究員 本多雅人)
持続可能な社会への転換
―「低炭素社会」―


国立環境研究所特別客員研究員 西岡 秀三
■ 温暖化の問題
 私は、環境というのは人間と自然の入り合ったところという定義をしております。
 人間の構造を決めているのは正にそれぞれの環境であり、とりわけ安定した気候こそ人々の幸せな営みの基礎だと考えています。ところが、産業革命以降の人間の活動は、自然資源を枯渇させ、二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガス(他にメタン、一酸化二窒素など、計6種類)の排出により、気候変動を生じさせ、生態系を破壊してしまうなど、いわゆる地球温暖化の問題を引き起こしました。社会システムそのものも気候を前提にして出来ていますが、それが気候変動によりバランスがとれなくなってきたのです。私が関わっている IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第四次報告書では、この温暖化の原因は人為的行為の結果であると断定しています。
 この100年で気温が0.74度上昇したと言われていますが、IPCC では、これからさらに2度〜3度上昇しますと深刻かつ危険な状況に陥ると警告しています。このまま温室効果ガスが排出され続ければ、30年ほどでその危機が訪れることになります。具体的には、ツバルをはじめとした南の島国が海面下に沈むこと、水資源の枯渇、淡水地域への塩水流入による農作物の被害、頻繁な大型台風の発生、干ばつと洪水の発生、多くの生態系の破壊や生き物の絶滅など、枚挙にいとまがありません。
 温室効果ガスの排出を抑えたとしても、すでに大気中に限界を越えて溜たまっているわけですから、なかなか減りません。安定化するまでに2〜300年かかります。さらに濃度が一定になったとしても、気候が安定化するにはまだまだ数世紀かかるのです。ですから早めに手を打っておかないと大変なことになるのです。この温室効果ガスの大量削減を伴う容易ならない変革を求められていることを深刻に受け止めなければなりません。
■ 持続可能な社会への転換 ―低炭素社会実現に向けて―
 「持続可能な社会」とは、一つの平等な社会であり、誰もが豊かになって、それがいつまでも続く社会です。具体的には「低炭素社会」の実現であり、低炭素排出で安定した気候のもとで持続可能な社会のことです。気候を安定化させるには、石油などの化石燃料利用の廃棄物である CO2 の人為的排出量を自然の吸収量、つまり陸上生態系と海洋が吸収できる範囲内に押える「定常化社会」を目指すことです。温暖化による水資源、農業資源、自然資源の劣化により人類生存基盤が危うくなっているので、まず温室効果ガスを削減することが先決です。
 世界全体として低炭素社会の構築に乗り出したというのは洞爺湖サミットであり、福田ビジョンです。洞爺湖サミットでは2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を半分にしようと合意しました。日本は一人当たりの CO2 排出量というのは途上国の2.5〜3倍ぐらいですから、 日本は70%ほど減らさねばなりません。これをどう進めるかについて、われわれは、2050年の望ましい社会像をまず設定して、そこに大幅削減の目標をかぶせ、そこに向かって、未来からの要請を実現するために、今からどのような手を打っていけばよいかを探る手法をとっています。これを「バックキャスティング」と言います。
 2050年に想定されるサービスを満足させながら、温室効果ガスを70%削減する技術的ポテンシャルは可能なのです。ここで気をつけていただきたいことがいくつかありまして、想定されるサービスを満足するとはどういうことかというと、これだけ明るさがほしいとか、交通はきちんと確保してほしいと求められたら、それにきちんと応えるということです。これがサービス市場です。消費者がほしいのは適切なサービスであって、そこで消費されるエネルギーではありませんから、便利さをいかにエネルギーの少ない形で実現できるかが技術に求められているのです。ですから、要求されるエネルギーをなるべく CO2 の排出が少ないエネルギー源から供給する必要があります。
 エネルギー需要のおおむね半減とエネルギー供給の低炭素化によって「低炭素社会」は実現可能なのです。削減は個別技術の開発・導入だけでは実現できませんから、需要側の省エネ努力と正しい技術選択や都市・交通などのインフラストラクチャーからなるさまざまな社会構造の変化が必須であり、同時に、エネルギー供給側では、低炭素エネルギー源の適切な選択とエネルギー効率の改善の組み合わせで、低炭素化が図られるのです。そのためにも、なんといっても政府の強いリーダーシップが必要なのです。
 気候というのは地球公共財なのです。そうなってくると、世界全体で協力することが大事であり、今や競争から協力の時代に入っているのです。その協力の枠組みの中で競争するという時代になってくる。つまり、低炭素社会においては、社会的責任としての自社業務から排出する CO2 削減は当然として、その製品・サービスを利用する時のエネルギーや CO2 排出を少なくすることで市場競争力を強めることができるのです。
 さしあったって、持続可能な日本の新構築が求められているのではないか、そういう全面的に重要な転機に来ていると思います。それは経済だけにとどまらず、人々の生活・価値観やエネルギー文明のあり方まで問われているのです。
(文責:親鸞仏教センター)
西岡 秀三(にしおか しゅうぞう)国立環境研究所特別客員研究員
1939年、東京都に生まれる。東京大学工学部機械学科卒業。東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。専門は機械工学、環境システム工学。工学博士。旭化成工業を経て、国立公害研究所(現・国立環境研究所)に入所。東京工業大学大学院教授、慶應義塾大学大学院教授、国立環境研究所理事を歴任。
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