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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2012年12月4日、東京ガーデンパレス(文京区)において、経済学者で一般社団法人不識庵理事長、「不識塾」塾長、三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長である中谷巌氏をお迎えして「現代と親鸞の研究会」を開催した。現在の資本主義社会が抱える問題点を歴史的な視点から鋭く分析し、さまざまな提言をされている中谷氏に、「資本主義の歴史と文明の転換」をテーマに語っていただいた。ここに、その一部を紹介する。
(嘱託研究員 大谷一郎)
資本主義の歴史と文明の転換

経済学者・一般社団法人不識庵理事長・「不識塾」塾長三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長  中谷 巌
■ 資本主義とは
 資本主義とは名前のとおり資本が主人公です。投資した資本に対する収益を最大にするように、個人や企業、政府が行動することによって経済発展が可能になるという理論です。資本の飽くなき自己増殖の欲求、つまり人間のもっている欲、できるだけ物質的に豊かになりたい、豊かな生活をしたいという欲望を一つの大きなテコにして眠っていた資源を開拓し、新しい技術を開発することによって生産性を引き上げ人々の生活を豊かにする。資本主義とはそういう仕組みだと考えてよいと思います。

■ 現在の先進資本主義国の現状
 資本主義が発展するためには、宗教改革、市民革命による個人の解放や科学革命などいろいろな要因がありますが、そのなかでも一番重要だったのはフロンティアの開拓、フロンティアの収奪ということです。具体的には、それは原材料、鉱物資源の支配権の確立というものです。ですから、ヨーロッパ諸国は各国を植民地化していくことによって、その支配権を獲得していったわけです。そのことにより、好きな量を好きなときに植民地で採掘し、好きな値段で必要な先進国にそれを送り届けることができるようになりました。このような安い原材料の供給源として世界のフロンティアというものが活用されてきたということが、資本主義的発展の非常に大きなベースになっていると思います。
 安い原材料を仕入れて工業製品化し、それを世界のマーケットに売っていくのですが、それは比較的独占的な力があるので高い値段で売れます。原材料を安い値段で買って、それを加工した工業製品は高い値段で世界に売るという、この価格差が余剰になるわけです。これを経済学では交易条件と言います。分母に輸入価格指数、分子に輸出価格指数、(輸出価格指数÷輸入価格指数)を交易条件と言いますが、当時はこれが非常に高かったのです。
 ところが、第二次世界大戦終了後くらいからこれが着実に低下してきました。なぜかと言いますと、植民地主義が第二次世界大戦で終わり、各植民地国が独立し、それまで宗主国に支配されていた原材料や鉱物資源の支配権の奪還を狙いました。その最たるものがOPECです。石油メジャーと言われるモービル、ブリティシュ・ペトロリアム、ロイヤル・ダッチ・シェルなどという旧植民地宗主国がもっていた利権を産油国が取り戻すためにOPECを設立したのです。
 1973年に第一次石油ショックが起こりますが、この当時の原油価格は1バーレル3ドルでした。現時点(本研究会開催時)では約89ドル、一時は150ドルくらいにまで上がりました。いずれにしても3ドルと比べればとても高い価格です。つまり、石油ショックに至るまでは旧宗主国が石油の利権を押さえていたために、相当安い値段で石油を買うことができましたが、この利権を手放さざるをえなくなったのが現在の状況です。このことは、実は石油だけの話ではなくて、鉄鉱石や石炭などほとんどすべての原材料が値上がりしました。宗主国の支配権が及ばなくなってきたのです。
 つまり、先ほどの交易条件で言えば、分母にくる原材料価格が大幅に上がったのです。そして、世界がグローバル化して中国などが自由主義経済のなかに入ってきて、例えば、中国が作る工業製品価格は先進資本主義国が作る価格の5分の1で作れるようになり、交易条件の分子にくる工業製品の輸出価格が大幅に下がりました。つまり、輸入する原材料の価格が大幅に上がり、輸出する工業製品の価格は大幅に下がったのですから、先進国の交易条件は大きく切り下がるという状況になっています。
 このことは、先進国がかつての植民地時代に、享受していた余剰というものを失ったということを意味します。実はこれが現在、欧米、日本という先進資本主義国の経済が長期的に低迷している根源的な構造的要因だと言えると思います。したがって、従来型のかたちではもう資本主義は行き詰まらざるをえないという状況に入ってきたということです。

■ これからの世界
 現在、世界は、環境問題、格差の問題、高齢化、少子化問題等多くの問題を抱えていますが、その問題の根にあるものは非常に大きなものです。それはわれわれ一人ひとりの心の在り方、価値観そのものまで問われているということです。そのことを多くの人はわかり始め、感じ始めています。しかし、それが実際の日常の行動に反映されるまでには相当な距離があると言わざるをえないと思います。究極的には「足るを知る」というところまでいけるかということです。
 紀元前5百年くらいにギリシャ文明が生まれ、また同時期に釈尊が誕生し、仏教、東洋思想が生まれました。私の理解するところ、ギリシャを中心とする西側の世界は自己の欲望というものを肯定し、それをどういうロジックで正当化し、実現させていくのかということを文明の基軸においてきました。それが資本主義に結びつき、現在のような生活水準の上昇となって表れてきました。しかし今、それが限界にきているのです。そして紀元前5百年ごろから東洋でかたち作られてきた思想の体系とは、もともと自己の欲望を抑制することこそ豊かさにつながるのだという考えであり、それは西洋の思想とは対極にあるものです。
 このような対極にある思想がそれぞれ生まれ、とりあえずこの2500年間は、西洋の自己の欲望を肯定する考え方のもとに世界の歴史が綴(つづ)られてきました。それが行き詰まり、これからの21世紀は東洋思想がようやく主役に躍り出る時代と考えることもできます。しかし、具体的にそれがどうしたら可能になるのかは非常に難しい問題です。(文責:親鸞仏教センター)

※中谷 巌氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第27号(2013年12月1日号)に掲載しています。

中谷 巌(なかたに いわお)経済学者・一般社団法人不識庵理事長・「不識塾」塾長・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長
1942(昭和17)年大阪府生まれ。一橋大学経済学部卒業。1965〜1971年日産自動車勤務。1973年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)を取得。同大学研究員、講師を勤めた後、1974年大阪大学経済学部助教授、1984年同教授。1991年一橋大学商学部教授に就任。1999年一橋大学教授を辞職後、同年9月多摩大学経営情報学科教授。2001年9月から2008年3月まで多摩大学学長。2008年同名誉学長。
1999〜2005年ソニー株式会社取締役、2000年三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)理事長、2003〜2005年6月ソニー取締役会議長。2010年一般社団法人「不識庵」を設立、同年5月より私塾「不識塾」開校。
著書に、『資本主義以後の世界〜日本は「文明の転換」を主導できるか』(徳間書店)、『日本の「復元力」―歴史を学ぶことは未来をつくること』(ダイヤモンド社)、『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』(集英社)、『入門マクロ経済学 第5版』(日本評論社)、『中谷巌の「プロになるならこれをやれ!」』(日本経済新聞社)など多数。
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