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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2013年1月22日、東京国際フォーラム(有楽町)において、株式会社リナックスカフェ代表取締役である平川克美氏をお迎えし、「現代と親鸞の研究会」を開催した。グローバリズム資本主義の価値観が支配する世の中、右肩上がりの志向をし続けてきた社会そのものがいま深刻な行き詰まりを迎えようとしている。平川氏はその問題の根にあるものを、現実の「人口減少」という社会現象を通し、冷静に分析されていく。ここに研究会の一部を紹介する。
(元研究員 花園一実)
誰も知らない人口減少社会の意味

株式会社リナックスカフェ代表取締役 立教大学特任教授 平川克美
■ 経済成長は必要なのか
 日本は経済成長し続けなければならないと言われています。しかし、そうは言っても、社会の構成員である人は、必ずあるときから年寄りになり、最終的には死んでしまいます。私たちは永遠に生きられるわけではありません。しかし、そういうことを日ごろは考えず、今がずっと続くのではないかという想定のもとにいろいろなことをやろうとしています。「誰にでも見えているけれど、誰にも見えていない」ことがあるのです。現在の時代状況を正確につかむためには、いったんそういう私たちの偏見を全部括弧に入れて見ていく必要があります。今、日本は経済成長が落ち込んでいるように見えます。しかし、それはあくまで「経済成長率」の話で、実は経済成長自体はずっと右肩上がりで上がっているのです。ただ、そのグラフの角度が鈍っただけ、上がり方が緩やかになっただけなのです。世間で今経済成長しなければならないと言われるのは、すべてこの「経済成長率」の話です。
 そもそも、日本が経済成長できていた理由は一つです。それは日本が貧しかったからです。経済成長をしていない国と、している国を考えてみると、経済成長をしている国というのはもともと貧しかった国なのです。戦後六十五年、貧乏な時代から国家の成熟と共に、人々がいろいろと物を持ち始め、それがある程度行き渡るようになり、ストックができたため、活発な需要がなくなったのです。これが、経済成長を横ばいにさせた原因なのです。ですから、確かに成長はしないかもしれませんが、世界から見れば日本の現状は、治安はよいですし、水は豊かで、とてもよい国だと思うのです。日本はだめになったと言う政治家もいますが、それはもう少し丁寧に見るべきだろうと思います。

■ 人口減少にまつわる偽りのイメージ
 日本の人口動態を一千年スパンで見ていきますと、驚くべき事実がわかります。鎌倉時代には七百万人だった人口が、江戸時代に三千万人で安定し、明治に入ると爆発的に増えて、今の一億三千万人までいくわけですが、驚くことに日本の歴史において、人口が減っていく時代というのは、これまで一度もありません。歴史が始まって以来、私たちの親も、そのまた親も、日本人は人口減少するということを誰も経験したことがないのです。私たちはふつう、問題があれば過去の事例から学んで対策を立てます。しかし、人口減少については誰も考えたことすらないのです。例えば、政府から育児給付金などの対策が出されていますが、ああいうものは数十年単位の短いスパンでしか、この問題を見ていないのでしょう。人口の減少は単に将来への不安が原因なのではありません。歴史のなかで将来に対する不安が強かった時代は、これまでにいくらでもありました。第二次世界大戦前、江戸幕府崩壊前、人々が町中で斬り合いをするような戦乱の時代。しかし、それでも人口は変わらず増え続けてきたのです。同様に、アフリカのような貧しい国々であっても、人口爆発が起きているのですから経済不況も関係ありません。また一般的に、経済を成長させるために人口を増やさなければならない、人口が減ることは不幸だと言われています。しかし、一人あたりのGDPで言うと、今一番高いのはルクセンブルクです。ルクセンブルクは51万人強で日本の宇都宮市くらいの人口です。人口が少ないので当然一人に対する配分は増え、全然不幸ではありません。これで人口が減ると豊かさもなくなるというのは嘘だということがわかります。ならば、私たちはいったい何をもって「人口が減ってはいけない」という議論をしているのでしょうか。

■ 人口減少はなぜ起こるのか
 そもそも人口はなぜ減っていくのでしょうか。それは女性が子どもを産まなくなったからではありません。子どもは産んでいます。しかし、たくさんは産まなくなったのです。つまり、女性の結婚年齢が上がり、出産期間が短くなった、ただ、それだけなのです。では、なぜ結婚年齢は上がったのでしょうか。それは、日本の家族形態が大きく変わったことに起因しています。日本の家族は、長子相続、家父長制の、権威主義的直系家族でした。しかし、1973年からの相対安定期の時代に、英米流の価値観が日本に輸入されます。その結果、週休二日制によって労働と消費が分化し、遊ぶために働くという価値観が生まれました。また、コンビニエンスストアの普及によって、昼夜が逆転し、家でご飯を作らなくてよくなりました。消費が世の中の中心になってきたのです。すると、お金を中心に世の中が回っていくようになります。価値観の中心がお金になることで、従来の父親の権威を中心とする日本の直系家族的価値観が変化し、男女の家族的役割も必然的に変化していったのです。お金があればベビーシッターを雇い、女性はその余った時間を他のことにまわすことができます。かつては卓袱台(ちゃぶだい)を囲んで家全体が一つでしたが、ある時期を境に子ども部屋ができ、それぞれの部屋にテレビが入るようになりました。そのうちに家を出るようになっていった。家族が一緒に暮らすという紐帯(ちゅうたい)がものすごく弱くなっていったのです。
 個人から見れば、これは個人の自由がどんどん広がっていくということでもあります。プライベートな空間が与えられ、プライバシーが重視されます。しかし、自由を獲得するということは、人々が孤立化するということでもあるのです。そして、この人々が自由を獲得していくプロセス、これは紛れもなく民主主義の成果なのです。ですから人口減少は、民主主義の成果であると言えます。善いか悪いかということではなく、私たちが、この旧封建的な家制度を自ら望んで壊していったのです。その結果として女性たちがその家から飛び出て、家庭を作ることをしなくなった。そして私たちは、本当はそのことをよく知っているはずです。(文責:親鸞仏教センター)

※平川克美氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第27号(2013年12月1日号)に掲載しています。

平川 克美(ひらかわ かつみ)株式会社リナックスカフェ代表取締役
1950(昭和25)年東京都生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。1977年に渋谷道玄坂に翻訳会社、株式会社アーバン・トランスレーションを設立。1999年シリコンバレーのインキュベーションカンパニーであるBusiness Cafe. Inc.設立に参加、現在同社CEO。2000年ビジネスカフェジャパン設立、現在同社代表取締役ファウンダー。2001年株式会社リナックスカフェ設立、現在同社代表取締役社長。2011年より立教大学特任教授。 著書に、『移行期的混乱:経済成長神話の終わり』(ちくま文庫)、『小商いのすすめ「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』(ミシマ社)、『俺に似た人』(医学書院)、『9条どうでしょう』(ちくま文庫)、『経済成長という病』(講談社現代新書)、『反戦略的ビジネスのすすめ』(洋泉社)など多数。
また、親鸞仏教センター情報誌『anjali』第22号に「『移行期的混乱』を生きるということ」をご執筆いただいている。
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