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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2014年4月14日、東京国際フォーラム(千代田区)にて、政治学者の中島岳志氏を迎え、「現代と親鸞の研究会」を開催した。氏は、これまで真宗教団が積極的には触れてこなかった親鸞思想と日本主義の関係に厳しくメスを入れ、思想構造そのものに危険性が内包されると指摘する。そして、その危険域(虎穴)に入ることによって、逆説的に親鸞思想の魅力が明らかになるとも述べる。――虎穴に入らずんば虎児を得ず。ここに、その問題提起の一端を紹介する。
(研究員 名和達宣)
親鸞と日本主義

北海道大学大学院法学研究科准教授  中島 岳志
■ ナショナリズムと宗教
 二十歳のころから「ナショナリズムと宗教」が自分の課題でした。当初、この議論で一番中心の問題は日蓮主義でした。北一輝や石原莞爾(かんじ)など「日本型ファシスト」と呼ばれる人たちの多くは日蓮主義者です。親鸞はこういう思想から最も距離があると思っていました。しかしあるとき、三井甲之(こうし)の『親鸞研究』という本を手にし、天地がひっくり返りました。彼は当時の軍国主義で最も強烈なイデオロギーをもった「原理日本」の中心で、「最も危うい思想家」という記憶がありました。その三井が、親鸞のロジックから天皇機関説に対する排撃などさまざまな言論弾圧事件を、権力と結びつきながら行っていた。自分が安全圏だと考えていた親鸞の思想が、最も根深い日本ファシズムの問題と癒着(ゆちゃく)していることをどう考えればよいのか。このような問題が、私の主体的な関心として立ち表れてきました。

■ 「一君万民」のイデオロギー
 日本右翼の思想を考えるとき、最も重要な概念が「一君万民」です。「君」は天皇陛下、「万民」はわれわれ国民です。そのイデオロギーは、太陽と大地と雲というメタファーで語られます。天皇(太陽)は国民(大地)に対して燦々(さんさん)と光(大御心<おおみこころ>)を浴びせている。国民はそれに随順すれば、争いもなくなり、神のまにまに皆が一体化して生きることができる。国体に包まれれば、すべてが「永遠の今」のなかに存在する。こういう考え方が国体論として語られました。ところが、そうはなっていないではないか、大御心が何かに疎外されているのではないかという問いが起こってきます。そこでもう一つ重要な雲というメタファーが出てきます。大御心を邪魔している雲のような存在(君側<くんそく>の奸<かん>)が日本にはいるのではないか。だから、その雲を除去すればよいという発想が、血盟団事件や五・一五事件などの昭和維新テロを支えた重要なロジックでした。

■ 国体論と「絶対他力」の構造
 明治初期とその後の世代では、時代のすがたや悩みの根源が違った問題として表れます。それが大きくなったのは、日清・日露の戦間期です。この時代には、華厳の滝へ飛び込んだ藤村操(みさお)の自殺(1903年)に象徴されるような、明治期の「一君万民」よりも踏み込んだ内在的実存の問題が国体論にかかわり、宇宙と私の一体 化、あるいは他者と私の疎外の撤廃という問題として起こってきます。そして、これが親鸞の「絶対他力」の構造とシンクロしてくるのです。特に顕著なのは、大東亜戦争期を生きた、暁烏敏(あけ がらす はや)や金子大榮(だいえい)、曽我量深(りょうじん)など「ポスト清沢」の世代です。彼らに共通しているのは煩悶という問題です。自分たちの意志と大御心とが一体化した君民共同の世界観と、他力と自力の一体化、本願力と私たちの意志との合一化という構造が重なりあうのです。

■ 親鸞思想の危険性と魅力
 私はこれまで真宗教団が戦時教学に対する批判的な研究を行ってきたことに大変敬意をもっています。しかし、突っ込みどころが甘い。親鸞思想の構造そのものに内在する危険性をよく理解したうえで、どうすればその魅力に接近していくことができるのかという問いを、常に批判的に突きつけていくことが必要だと思います。そして、おそらく親鸞が求めたのはそういう精神の強靭さです。親鸞は「これは正しい」ということに対して、常に梯子(はしご)を外していく思想家だと思います。親鸞を読んでいると、「本当にそうなのか」という問いが常にこだましてきます。「これは正しい」と言った瞬間に、日本主義の問題に取り込まれていく構造が自分たちのなかにあるということを、繰り返し問い返さないかぎり、実は親鸞の魅力にすら私たちは接近できないのではないでしょうか。
(文責:親鸞仏教センター)

※ 中島氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第30号(2015年6月1日号)に掲載しています。

中島 岳志(なかじま たけし)北海道大学大学院法学研究科准教授
1975年、大阪府に生まれる。大阪外国語大学外国語学部(ヒンディー語学科)卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。学術博士(地域研究)。京都大学人文科学研究所研修員、日本学術振興会特別研究員を経て、現在、北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院准教授。専門は南アジア地域研究、近代政治思想史。
 週刊金曜日編集委員、『表現者』編集委員、朝日新聞紙面審議会委員、毎日新聞書評委員を務める。
 2004年博士論文でアジア太平洋研究賞受賞、2005年『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞受賞、アジア太平洋賞大賞受賞、2006年『ナショナリズムと宗教』で第一回日本南アジア学会賞受賞。
 近著に、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『血盟団事件』(文藝春秋)、『岩波茂雄―リベラル・ナショナリストの肖像』(岩波書店)、『ナショナリズムと宗教』(文藝春秋)、『アジア主義―その先の近代へ』(潮出版社)など多数。
 共著に、『いま〈アジア〉をどう語るか』(弦書房)、『人間といういのちの相』(東本願寺出版部)、『脱グローバル論 日本の未来のつくりかた』(講談社)、『「知」の挑戦 本と新聞の大学供戞塀険兌區圭顱砲覆病真堯
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