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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 2014年6月30日に、早稲田大学教授の水島朝穂先生をお招きして「現代と親鸞の研究会」を開催した。「改めて憲法とは何かを考える」と題された講義は集団的自衛権の問題点や、憲法とは何かという本質的な議論まで多岐にわたって行われた。翌日には安倍内閣により集団的自衛権の行使が閣議決定されるという歴史的な1日に開催された講義の一端を以下に紹介する。
(親鸞仏教センター嘱託研究員 田村晃徳)
改めて憲法とは何かを考える

早稲田大学法学学術院教授  水島 朝穂

■ 25年ごとの変化
 皆さんもいろいろなところでお聞きになっていると思いますが、今年は1914年に第一次世界大戦が始まってから100年にあたります。この大戦は人類史に巨大な変化を与えました。本格的に飛行機による空中戦が始まったのもこの大戦からです。この戦争の性格と内容が今日の集団的自衛権を考えるうえでも前提となります。
 歴史は大体25年間で変化していきます。第一次世界大戦の25年後は1939年です。つまり今年は、第二次世界大戦が始まってから75周年なのです。そしてその25年後は1964年です。この年は東京オリンピックが開催されましたが注目すべきはそこではなく、トンキン湾事件です。アメリカのマクナマラ国防長官(当時)が、ちょうど今の安倍首相のようにパネルを用いて説明していました。トンキン湾でアメリカの駆逐艦がベトナムの魚雷艇に攻撃された。つまり奇襲されたので、自衛権の行使としてアメリカはB-52で北ベトナムに対する本格的な爆撃を開始しました。その後に、このトンキン湾事件はアメリカによる謀略であったことがわかるのです。しかし、自国は攻められていない韓国やオーストラリアも集団的自衛権を前提にした条約をアメリカと結んでいるので、ベトナム戦争に参戦しました。集団的自衛権行使の悲惨な例が50年前にあったのです。当時はアメリカの攻撃を自衛権だからやむをえないという論調もありましたが、事実はアメリカによるでっちあげだったのです。
 それでは、1964年の25年後である1989年には何があったでしょうか。ベルリンの壁崩壊です。アメリカはベトナム戦争の敗北でダメージを受け、それが後に大きなトラウマとなりました。集団的自衛権の仕組みであったのがNATOとワルシャワ条約機構です。そして冷戦時代の米ソの代理戦争がベトナム戦争なのです。その冷戦の象徴であったベルリンの壁崩壊が1989年でした。
 そしてソ連は崩壊しました。アメリカは一極支配というかたちで世界に君臨しました。しかし、傲(ごう)慢な一国資本主義、金融資本主義は2008年のリーマンショックで一気に崩れ落ちました。第一次と第二次の世界大戦の間にも大恐慌が起きています。そして今年はベルリンの壁崩壊から25周年であり、第一次世界大戦開戦から100年です。このように、歴史の節目で経済、政治、そして謀略にしても不思議なかたちで繰り返されていたのです。

■ 憲法とは何か
 そして明日7月1日を迎えようとしています。集団的自衛権の行使を閣議決定で認めることになります。いわば憲法の実質的改正です。これは今日までと明日以降とで戦後史は大きく変わります。日本の世界に対するパラダイムが変わります。それほどの大きな枠組みの変化が起きるわけです。
 憲法を変えるにしろ変えないにしろ、「憲法とは何か」がわからないと議論はできません。最近、私は講演などで「私たち国民が守らなくていい唯一の法」だと話します。なぜかと言えば憲法を守るべき人を、憲法自身が指名しているのです。それが憲法第99条です。そこには「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とあります。ここに「国民」は入っていません。逆に言えば、国民は憲法尊重擁護義務を負っていないのです。それを負っているのは、憲法を破る可能性をもつ、権力者だけなのです。ですから、憲法とは私たち国民が守らなくていい唯一の規範であり、国民が権力者に守らせる規範であると言えるのです。憲法とは権力者を縛り、統制し、制限するものです。

■ 立憲主義と民主主義
 ここで「立憲主義」について説明します。今まで、皆さんが憲法を学ぶときに立憲主義については教わらなかったのではないでしょうか。新憲法制定時に「あたらしい憲法のはなし」という教材が中学生用に当時の文部省により作成、配布されました。今でも護憲派によく読まれていて役に立つ本ですが、弱点がありました。それは「憲法は私たちが守っていかなければならない」という記述が多いのです。そのような思いを子どもたちに植え付けてしまったのです。しかし、そうではなく国家権力が私たちを侵害することから守るのが憲法なのです。そのような経緯もあり、立憲主義を強調するようになったのは80年代以降なのです。それまでは民主主義が中心的でした。実は憲法学においては、立憲主義と民主主義とを混乱して説明してきたのです。人権の保障も民主主義の内容であり、少数者の擁護が重要であるとされてきました。しかし、民主主義とは突き詰めると「多数決」であり、多数者の立場を重視するのです。立憲主義は違うのです。多数者ではなく少数者を守るために立憲主義はあるのです。つまり、端的に言うと立憲主義は「反多数者主義」なのです。民意を最重視する政治家もいます。彼らは政策を実行するのに「民意だから」と言いつつ、個人の権利を侵害してきます。それを「民意にもかかわらず」と少数者を守るのが立憲主義なのです。立憲主義の心は「人権の保障」と「権力の分立」、つまり「権力の統制」だと言えます。だからこそ、権力者の側から憲法改正の条件を緩和するという話が出ることはおかしいのです。
(文責:親鸞仏教センター)
水島 朝穂(みずしま あさほ)早稲田大学法学学術院教授
 1953年、東京都府中市生まれ。83年札幌学院大学助教授、89年広島大学助教授を経て、96年より現職。憲法、法政策論。法学博士。99年〜00年ボン大学で在外研究。憲法理論研究会(創設者・鈴木安蔵)前代表、全国憲法研究会代表(2015年まで)ほか。
 単著に『18歳からはじめる憲法』(法律文化社)、『東日本大震災と憲法』(早稲田大学出版部)、『戦争とたたかう―憲法学者・久田栄正のルソン戦体験』(岩波現代文庫)、『はじめての憲法教室―立憲主義の基本から考える』(集英社新書)など多数。編著に『平和憲法の確保と新生』(北海道大学出版会)、『長沼事件・平賀書簡』(日本評論社)、『憲法裁判の現場から考える』(成文堂)など多数。共著に『改憲の何が問題か』(岩波新書)、『検証・防空法―空襲下で禁じられた避難』(法律文化社)、『集団的自衛権の何が問題か―解釈改憲批判』(岩波書店)など多数。
 HKラジオ第1放送「新聞を読んで」レギュラー14年(2011年番組終了)。ホームページ(「平和憲法のメッセージ」http://www.asaho.com/)
 なお、当センター『アンジャリ』第28号に「これからの憲法のはなし」をご執筆いただいている。
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