親鸞仏教センター
お問い合わせ
 
「現代を生きる人々」と対話するために
HOME親鸞仏教センター概要アクセスサイトマップ
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内研究員一覧
 HOME > 研究活動報告 > 現代と親鸞の研究会
研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 現代の世界情勢を知るうえでイスラム教、また、イスラム世界の研究や理解は不可欠である。
 親鸞仏教センターでは2016年2月3日に「現代と親鸞の研究会」の講師として内藤正典氏をお呼びした。内藤氏は現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授であり、中東問題の第一人者である。当日は「イスラームとその世界 私たちが知っておくべきこと」という講題のもと、講義をいただいた。以下にその抄録をお届けする。 (親鸞仏教センター嘱託研究員 田村晃徳)
イスラームとその世界
  ―私たちが知っておくべきこと―


同志社大学大学院
グローバル・スタディーズ研究科教授 内藤 正典氏

■ 「信徒ではない」ことの意味
 まず、はじめにお断りしておくのは、私はイスラム教の信徒ではないということです。ですから私が話すのはイスラム教の社会の話、あるいは地域の話です。もちろん、イスラム教についても間違いのない範囲で言及はいたします。しかし、イスラム教の信徒であるかないかによって、ものの見方が大きく違うということ。このことをまずご理解いただきたいのです。例えば、ジハードで自分が敵だと思った者を殺していいか、となればイスラム教徒のイスラム学者であれば「それはあり得る。コーランに書いてあるから」と答えます。しかし、私はイスラム教徒ではありませんので「信仰の敵であるから、殺していいとはならない」と答えるわけです。

■ スンニ派とシーア派
 イスラム教徒は世界中に住んでいます。イスラム教にはスンニ派とシーア派がありますが9割はスンニ派です。シーア派はイランに多いのですが、イスラム教徒の1割位です。両者は何が違うのか。ごく簡単に言えば先にできたのがシーア派であることは覚えてください。イスラム教を創始したのは預言者ムハンマドです。そして、ムハンマドの娘婿にあたるアリーという方がいました。シーア派というのはアリーのことをとても慕った方々なのです。現代の言葉で言えばアリーのフォロワーであります。そのフォロワーにあたる言葉が「シーア」なのです。スンニ派の教義ができあがるのは、もう少し後になります。スンニ派の人達から見れば、ことのほかアリーのみを愛するシーア派の人達は奇異に見えたはずです。だからといって異教徒の神を信じているわけではありませんから、皆殺しにせよとはならないわけです。
 IS(Islamic State イスラム国)は、このシーア派を皆殺しにしてしまえと言っているのです。今までにいろいろ過激な集団はでてきましたが、そこまで公言する組織はありませんでした。なぜかと言えば、シーア派は異端だからということです。ISは周りのイスラム教徒を異端だと決めつけては処刑しようとします。これが強硬な点ですね。そのような基本的な事項を覚えておいてください。

■ シリアからの難民
 現在のドイツ、フランス、オランダなど西ヨーロッパ国の先進国にはイスラム教徒の移民の人たちがいます。彼らがヨーロッパに入ったのは1960年ごろからです。昨年から膨大なシリアからの難民の流入によって「ヨーロッパがイスラム教徒と向き合わなければならなくなった」という報道がされていますが、誤りです。半世紀も前からイスラム教徒はいたのです。このような点をジャーナリストたちは誤解しているのです。このシリアからの難民の問題が起こる前から、はっきりした数はわかりませんがドイツ、フランス共に480万人ほどのイスラム教徒が住んでいたとされています。つまり、ヨーロッパではすでにイスラム教が第二の宗教になっていたのです。

■ アサド政権からの逃避
 誤解の一例をあげましょう。ヨーロッパジャーナリストが「難民はISから逃れてきたのだから受け入れなければならない」と言います。これは誤りです。なぜならばシリアからヨーロッパに入った難民のほとんどはISから逃れてきたのではありません。彼らはアサド政権の攻撃から逃れてきたのです。安倍総理もそのように言っていましたが誤りです。2014年はじめにはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、正確には数えられないがシリアからの難民が300万人に達するだろうとしていました。しかし、2014年の初めにISはいないのです。ISが登場するのは2014年の6月以降のことです。ですからアサド政権側の空軍などによる反体制側への苛烈(か れつ)な攻撃から逃れてきたのです。

■ 旅人には優しく
 オスマン帝国の時代には、ユダヤ教徒やキリスト教徒も住んでいました。しかし、迫害はしませんでした。税金を徴収したのです。そのかわり共存していったのです。つまり「不平等下の共存」です。そのように異教徒とも共存していたのです。
 現在、トルコ一国で難民が250万人くらいいます。しかし、排斥運動は起こっていません。シリアから彼らが来たという因果関係はもちろんわかっています。しかし、原因が何であろうと彼らは客なのです。客に向かって帰れとは言えないわけですよね。トルコは難民とは見ないのです。ドイツやデンマークなどと違って排斥しない。それはイスラム教徒に国境の考えがないからなのです。国家に所属するという観念がないのです。コーランのなかに「旅人は弱者であるから優しくしなさい」と書いてあります。神の絶対命令なのです。そこには従わなければならないのです。
 人が亡くなったときもいつまでも悲しんでいてはいけないと教えます。誰かが亡くなると「これで天国に行けた。よかった」と皆が言い出すのです。そうすると、だんだん遺族も「よかったのかな」と思えてくるのです。お葬式のときに「亡くなった人に対する「貸し」を放棄しますか」、と聞かれるのです。そうすると「放棄する」と答えるのです。これは最後の審判のときに、その人に罪が残らないようにするという思いからだそうです。
(文責:親鸞仏教センター)

※内藤氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第34号(2016年12月1日号)に掲載しています。


内藤 正典(ないとう まさのり)氏
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授
 1956年東京生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退後、東京大学教養学部助手、一橋大学大学院社会学研究科教授などを経て現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授、研究科長。専門は、現代イスラーム地域研究、移民研究、中東の国際関係論。
 著書に、『トルコのものさし 日本のものさし』(筑摩書房、1994年)、『ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か』(岩波書店、2004年)、『イスラーム戦争の時代―暴力の連鎖をどう解くか』(日本放送出版協会、2006年)、『イスラムの怒り』(集英社、2009年)、『イスラム―癒しの知恵』(集英社、2011年)、『イスラームから世界を見る』(筑摩書房、2012年)、『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』(集英社、2015年)、『トルコ 中東情勢のカギをにぎる国』(集英社、2016年)、『イスラームとの講和 文明の共存をめざして』(集英社、2016年)、『欧州・トルコ思索紀行』(人文書院、2016年)、など多数。
Backnember ページトップへ
公開講座 親鸞思想の解明 現代と親鸞の研究英訳『教行信証』研究会
清沢満之研究会 「『教行信証』と善導」研究会会 「三宝としてのサンガ論」研究会」研究会
聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会近現代『教行信証』研究検証プロジェクト
親鸞仏教センター研究交流サロン インタビュー
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内バックナンバー一覧
親鸞仏教センター
MAP
親鸞仏教センターTwitter親鸞仏教センターfacebook

親鸞仏教センター [真宗大谷派]<br>〒113-0034 東京都文京区湯島2-19-11
TEL 03-3814-4900 
FAX 03-3814-4901 
mail:shinran@higashihonganji.or.jp
 
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます
Copyright©The Center for Shin Buddhist Studies. All rights reserved.
ホーム 親鸞仏教センター概要 講座のご案内 スタッフ紹介 バックナンバー一覧 リンク サイトマップ アクセス