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研究活動報告
現代と親鸞の研究会
 「日本」が「神国」であるという認識は、現代にまで続く自国意識として大きな問題であり続けてきたが、そこには常に強烈な対外意識が作用している。殊に中国との関係性の中で、外来的なものを移入した複合体として日本的なものが形成されながら、「日本に固有のもの」を求める思考も古くからみられたのである。その形成過程、さらには仏教思想との影響関係について、伊藤聡先生に広範かつ詳細にご講演いただいた。その一端をここに報告する。 (親鸞仏教センター嘱託研究員 飯島 孝良)
「神国日本」という語りの重層性

茨城大学人文社会学部教授
伊藤 聡 氏

 「日本」が“世界の中心”というニュアンスで使われるのは中世以降からなのですが、そこには三国世界観という仏教的理念が関係しています。これは、インドから中国へ伝播した仏教のエッセンスが日本へ最もよく伝来したとする主観的な世界観です。そこには、ライバル関係にある他の教えを前に仏教が衰退したインドや中国と異なり、天皇を軸にした国家に仏教が守護されているが故に栄えているという、自負心のようなものがみられます。こうした世界観が鎌倉期に入ると末法思想の影響を受け、粟散辺土観という考え方が出てきます。これはもともと、世界の中心たる大きな南閻浮提の周辺に細かい国々があるという意識にすぎません。日本もそうした小国のひとつだと考えるのは否定的な自国意識にもつながり得るのですが、これが次第に「小さい我が国だからこそ仏教を護持している」という肯定的な自己意識になっていきます。『沙石集』などにみられるように、仏が、他国有縁の仏そのものの姿ではなく、日本に相応した神として現れることが、我々日本人が済度される為には最も有効である——つまり、日本が粟散辺土だからこそ「神国」でなければならない、と考えられるようになりました。

 対外関係のなかで形成された自意識という点では、武士の語りにも「神国」の意識が関わってきます。例えば中世神話においては、新羅の侵略(そのような史実はないのですが)をその都度天皇や化身してきた神々が打破してきたとされています。『八幡愚童訓』や『太平記』にあるこうした語りが、「神国」の武士だという自意識を形成していくのです。

 ただ、近世になると、儒者が現れますが、彼らにとって、日本と中国の関係は深刻な問題になってきます。日本に聖人が生まれていないのはやはり日本が中国よりも劣った国だからなのではないか、といった議論も出てきました。その一方で、秦の始皇帝の焚書坑儒の前に日本に聖典がもたらされており、だから失われた聖典が実は日本にあったという話が真面目に史実として受け取られるようなことさえありました。さらには、王朝がどんどん変わる中国に対して王統を一貫して維持している日本のほうが道徳的に優れている、といった議論にもなります。こうした日本優位論が、中国に対する否定的評価を生み出していきました。ただ、明治維新のときに、日本的ナショナリズムと儒教的国学を接合した水戸学などが台頭すると、これが倒幕の道具になるわけです。

 こういう日本固有のものの追求は近世から近代に至るまで繰り返されていて、例えば漢字で書かれた『古事記』の背後に非漢字的な世界を見いだそうとした本居宣長や、神道や仏教の背後に日本の「固有信仰」があるとした柳田國男、あるいはさまざまな中国的な意匠はあくまで形式的なもので、それとは別に日本固有の文化が独自に展開してきたという津田左右吉の言説にも表れています。その一方で、戦時中などは、むしろインドや中国のさまざまなエッセンスを総合した文明という考え方が「大東亜共栄圏」のイデオロギーになっていくわけです。こういう相矛盾した二つの見方を併存して使い分けているのが、古代から近現代までの日本なのだろうと考えています。

(文責:親鸞仏教センター)
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