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研究活動報告
清沢満之研究会
 清沢満之研究会では、2004年5月から「他力門哲学骸骨試稿」(以下、「試稿」と略記)を月1回のペースで読み進めている。また、通常の研究会に加え、2005年6月17日には「近代親鸞教学の系譜―清沢満之と曽我量深―」と題して、新潟大学副学長の深澤助雄先生をお招きし、講義をいただいた。
 今号では、「試稿」の「〔12〕 心霊」から「〔20〕汎神論万有開展論」までの研究内容について、その一端を紹介し、第2回(通算4回)報告とする(出典は『清沢満之全集』〈岩波書店〉とし、巻数と頁数を記す)。
清沢の人間学―有限心霊から無限心霊へ―

親鸞仏教センター研究員 伊東 恵深
■ 心霊の開発
 「〔12〕心霊」の考察は、前項「〔11〕補訂」の最後の一文「(次ニ心霊開発ニ先チ心霊ヲ論ス)」(第2巻55頁)を受けて展開する。清沢はここまで、有限と無限が同一体・表裏一体の関係であるということを、「万有の転化」という活動を通して推究してきたのであるが、この点を「心霊の開発」に確かめていこうとするのである。
 清沢は、まず「心霊」について、「吾人各自ノ如キモノナリ」(同巻56頁)と端的に押さえるが、欄外の自筆の図にあるように、「心」もしくは「意識」を意味する言葉であると思われる。清沢は、心理学的観点から、心霊に受動的(知的)側面と与動的(意的)側面の二つがあることを確かめていく。そして、この二つのはたらきを通じて、心霊の最も著しい特性である「情」について言及する。
 次に「〔13〕智情意」では、心霊の「知情意」 という特殊なはたらきについて、近代の解剖学の成果を手がかりに解明していこうとするのであるが、この意義について、『哲学館講義録』では次のように述べている。
精神作用ト神経系統トハ極メテ直接ノ関係ヲ有スルコト他ノ諸機関ト同日ノ論ニアラサルコトヲ知ルニ足ル 故ニ心理学ヲ研究スルニ当リテハ神経系ノ搆造作用ヲ知ルコト最モ必要ナリ 加之今日心理学ノ著シク進歩シタルハ解剖生理学特ニ神経系統ノ研究最モ発達セシニヨル者ト云ハサル可ラス(第3巻167頁)
 また「〔14〕三用ノ階級」では、「知情意」にそれぞれ段階があることを、日本において近代心理学の礎を築いた元良(もとら)勇次郎(1858―1912)の『心理学』(1890年刊)の内容を援用しながら記述していることにも注意を払うべきであろう(第3巻〔心理学試稿〕参照)。
 清沢が「試稿」を執筆した当時(1895年)、西欧における神経解剖学や心理学の研究は、日本において広く受容され、翻訳書や研究書が数多く出版されていた。清沢は、それら最新の研究成果を採り入れながら、心霊について推究していたことが窺える。
 さて清沢は、「〔15〕心霊開発」において、そもそも心霊の開発とは、前述の「知情意」のはたらきが下等から上等へと進行することである、と明言する。そして、その具体相を実例を挙げて説明するのであるが、要するに心霊の開発・発展は、個々別々の物体や現象を統制して、同一の本源へと帰入させ、ついには最上で究極の本源、すなわち大覚に到達させる、と論じるのである。  これが、清沢における人間存在(有限心霊)の基本的了解であった。
■無限心霊への発展
 次に清沢の考究は、有限心霊から無限心霊への発展・進達という課題へと移っていく。それが「〔17〕無限無数」以降に展開される、いわゆる「神仏論」である。
 「〔18〕無神論有神論」「〔19〕一神論多神論」「〔20〕汎神論万有開展論」という項目が示しているように、清沢は西洋思想における無限(神の概念)に関する議論をいくつか取り上げて、考察を加えていく。
 いま、その一つ一つの相違点を詳細に紹介することはできないが、ここで注目すべきことは、無神論・有神論・一神論・多神論・汎神論について、それぞれの主張に一理あると認めつつも、仏教の思想をそれらすべてを包摂するものとして捉えている点である。
万有ノ真理ハ其体无限ノモノナリ 之ヲ開悟覚了セルモノハ各々皆無限タルナリ 之ヲ比況スルニ彼ノ天上ノ月ニ対スル明鏡ハ其数幾何アルモ皆各一月ヲ得ルガ如シ 万有ノ真理其物一ナリト雖トモ之ヲ覚了スル所ノ能者ハ无量无数不可計ナルコト毫モ通シ難キ所ニアラサルナリ(第2巻61頁)
 例えばこの文章は、一神論・多神論は事柄の二方面からの捉え方であり、それらはともに包含し合う理論であると述べているが、ここに、仏教における「一如」と「衆生」の関係性を窺うことができるのではないだろうか。
 清沢は、有限と無限の動的な関係、すなわち開発・発展について十分に表現しようとするならば、仏教書の言葉のなかに求めざるをえない、と言う。それは例えば、「草木国土悉皆(しっかい)成仏」や「色即是空、空即是色」という経典の言葉が教示しているように、有限存在(人間と事物)が、開発・発展という事情によって、無限と完全に一致しうることを証明することである。それを清沢は「万有開展論」と名づけて論証していこうとするのである。
■錐をもむような思索
 前回の清沢満之研究会報告でも述べたことだが、「試稿」を読み進めていくにしたがって、清沢の透徹した理論構築のもと、他力仏教の学的課題が展開されていることが知られる。確かに、清沢の意図や文意が汲くみ取りにくい箇所もないわけではないが、論理の構成という観点から見れば、その道筋が首尾一貫して厳密に語られていることがわかる。
 哲学者の深澤助雄先生は、このような清沢の学的姿勢について、清沢は何よりも厳格主義的な求道者であり、ある時期までの清沢は、錐(きり)をもむようにして物事を考えていくというイメージがある、と述べておられた。また、清沢のような人物がなぜ出現したかについて、清沢は実存の比類なき典型であり、結局、日本人の生活倫理というものが、何百年もかけて日本仏教を培ってきたのであり、その一つが清沢というかたちで継承されたのではないか、と指摘された。
 近年、哲学思想の側からのアプローチによって、清沢が初期の論考を通して試行していた構想に光が当てられつつある。その成果に対して、仏教の側からいかに切り結んでいくのか。大切な課題が投げかけられているように思う。
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