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研究活動報告
清沢満之研究会
 清沢満之研究会では、2004年5月から「他力門哲学骸骨試稿」の読解を進めている。また、通常の研究会に加え、2006年1月13日には「清沢満之における内在と超越」と題して、東京大学大学院教授の竹内整一先生を、同年10月13日には「清沢満之における宗教と倫理」と題して、東京大学大学院教授の末木文美士先生をそれぞれお迎えし、講義をいただいた。
 今号では、前回報告(本紙第17号)に続いて、「〔21〕自利利他〔上〕」から「〔29〕無限(むげん)之因果」までの研究内容について、その一端を紹介し、第3回(通算5回)報告とする(出典は『清沢満之全集』〈岩波書店〉とし、巻数と頁数を記す)。  なお、これまで3年間の研究成果については、研究誌『現代と親鸞』において詳細を報告する予定である。
他力門仏教の救済―展現(てんげん)有限による有限存在の包摂(ほうせつ)―

親鸞仏教センター研究員 伊東 恵深
■自利・利他・方便
 清沢はこれまでの考究において、宇宙内の万有は各自、所動(受動)と能動(発動)の二つの動作をそなえたものであると論証してきた(「〔12〕心霊」、「〔16〕万有心霊」参照)。それを受けて「〔21〕自利利他〔上〕」では、所動とは、自己に不利なものは排斥して決して受用しないことから自利の作用であり、能動とは、他にはたらきかけて必ず利するものでなければならないことから利他の作用である、と推究していく。
 このように自利と利他は、万有の所動と能動の実際の正当なはたらきであるが、しかし現実の人間(有限)の活動は、この正当な作用に自害と害他という正反対の作用が混じるために、紛擾(ふんじょう)・錯綜(さくそう)することになる。それに対して神仏(無限)は、「〔22〕自利利他〔下〕」において、開発・発展を終えた存在であるから、そのような迷妄や混乱が生じることはない、と述べられる。そして、無限の自利の特性を「智慧」、利他の特性を「慈悲」と言い、この二つの特性から生じてくる摂化・救済のはたらきを「方便」と定義するのである。ここに無限の特質を見ることができるであろう。
 ところで、無限による摂化・救済が提起されてくる必然性とはいったい何であるか。それを考察するのが「〔24〕救済ノ必要」である。
今有限ガ開展シテ無限ノ結果ヲ得ンニハ必スヤ因縁ノ中ニ無限元素ヲ具ヘサル可カラズ 而シテ因素ハ則チ現在ノ有限ナリ 故ニ無限ハ必ス縁素ニ存セサル可カラズ 即チ有限ノ因ヲシテ無限ノ果ニ達セシムルノ縁ハ其用無限タラサル可カラサルナリ(第2巻66頁)
 有限が開発・発展して無限に到達するためには、無限の縁が作用しなければならない。この有限にはたらく縁こそが、無限の方便なのである。
■自力門と他力門
 次に清沢は、「〔6〕自他力二門」での考察を受けて、宗教における自力門と他力門の差異について再考する。それが「〔25〕自力他力」である。自力門とは、有限な自己の内に無限の性能が潜在していると信じて、自力の奮励(ふんれい)によってそれを開発しようとするあり方である。それに対して他力門とは、有限な自己の外に無限の存在を認めて、その妙用に帰依・信順して身を投じるあり方である。清沢は前節で、「因素ハ則チ現在ノ有限ナリ」と述べて、無限による救済の必要性を説いていたことから、ここでは他力門に身を置いて論じていることが窺(うかが)われる。
 本節で清沢は、仏教で言う「一切衆生悉有仏性」説は真実なのか妄念なのか、と自問自答する。これに対してまず、「一切衆生悉有仏性」はもとより真理であって、いささかの虚偽もないと答えるのであるが、続けて「無限ニ関スル実際談ハ覚者(現実無限)自ラニアラサレハ到底之ヲ為ス能ハサルナリ 今吾(われ)子(なんじ)ト共ニ現実有限ナリ(中略)吾人相互ノ談義ハ是非トモ論理ノ軌道ニ拠ラサル可カラザルナリ」(第2巻67頁)と述べて、有限なるわれわれは、論理の道筋にしたがって有限と無限の関係を解明していくしかないと断言する。ここに、有限存在としての自覚に立脚しながら、しかも、他力門仏教の体系を理論的に語り切ろうとする清沢の思想的営為を、あらためて窺うことができよう。
■無限の因果と展現有限
 清沢は「〔26〕方便」において、方便とは有限心霊に対して無限の智慧と慈悲を運用する大いなる活路である、と言う。有限は真実そのものである無限をそのまま受用することはできない。したがって無限は、その本性を棄すてて有限に接近しなければならないのである。清沢はこの無限の変容を、次のように述べる。
無限ノ変現トハ無限ガ変シテ有限ノ形式ニ顕現スルナリ 有限ノ形式トハ他ナシ 空間時間ノ経緯ニ於ケル因果的事業ヲ起シテ以テ有限通入ノ門戸ヲ開示スルニアリ(法蔵比丘ノ因源果海ノ徳相即是ナリ)(第2巻70頁)
 無限は、空間的・時間的に自己を限定して顕現することによって、有限(衆生)の摂取・救済を行うのである。それを清沢は、一如より形を現した法蔵菩薩(阿弥陀仏)の相すがたに確かめていこうとする。ここに、法性法身と方便法身の関係を想起することができるであろう。
 さて、「〔27〕無限ノ因果」以降、そもそも因果とは有限内の理法であり、無限は本来、因果の道理を超絶したものであるにも関わらず、なぜ因果の形式をとって有限界に現出するのかという問題が、一貫して究明されていく。それは一言で言えば、迷妄する衆生を悲憐するがゆえに、無上位を棄却して迷界に自身を投入するからである。清沢は、このような無限のはたらきを「展現有限」と名づけて、有限存在を救済する無限の大悲心を表現するのである。
 清沢は、無限がその功徳を十方に開示すると、有限はその施与された功徳を承認して受用する、と述べる。「開示」とは如来の回向であり、「受用」とは衆生の発信、すなわち信心を発起することである。ここに、清沢が再構築した他力門仏教の救済の論理が披ひ瀝れきされているのである。
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