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研究活動報告
清沢満之研究会
 2018年6 月15日、大谷大学の西本祐攝氏をお招きし、「「他力門哲学骸骨試稿」に学ぶ―研究の方向性―」というテーマで清沢満之研究会を開催した。西本氏はこれまで、真宗学の立場から清沢満之を学ばれ、特に清沢が結核療養中であった、「石水期」の思索に注目した研究を進めてこられた。親鸞仏教センターの清沢満之研究会では、現在、「他力門哲学骸骨試稿」(以下「試稿」と略)をテキストとしているが、その時期の清沢の人生と思索に深く学んだ西本氏から、この書を読むための重要な視座をご提示いただいた。本研究会では、まずは『宗教哲学骸骨』(以下『骸骨』)の議論に遡(さかのぼ)って「試稿」の基本的枠組みが確認され、さらに「在床懺悔録」や『保養雑記』といった資料から、当時の清沢が抱いていた宗教的な課題が確かめられた。以下ではその研究会の一部を紹介する。 (親鸞仏教センター研究員 長谷川 琢哉)
「他力門哲学骸骨試稿」に学ぶ
  ――研究の方向性――


大谷大学短期大学部専任講師
西本 祐攝 氏
■ 「他力門哲学骸骨試稿」との接点
 「試稿」と私自身の研究課題の接点は、『精神界』に掲載された諸論考に見られる「現在安住」の問題にあります。「精神主義」の要は現在安住であると言われるわけですが、その背景には親鸞の現生正定聚の考えがあるとされてきました。しかし、現在安住ということで清沢先生は本当のところ何を言おうとしていたのか。それを清沢先生の思索と人生から跡づけるような研究はありませんでした。私自身はそれを確かめたいと思い、研究を始めました。そしてそのためには清沢先生が親鸞をどのように学んだのかということを明らかにする必要が生じ、そこから「在床懺悔録」や「試稿」を読み始めました。またそれらの前提となっている『骸骨』にも遡ることとなりました。

■ 『宗教哲学骸骨』における有限無限
 「試稿」に「安心立命ハ無限ノ境遇ニ対シテ精神ヲ適合スルニアル」とありますが、この一節を理解するには清沢先生の思想のキータームである「無限」について確かめなければなりません。無限ということを清沢先生はどのように規定しているのでしょうか。『骸骨』では、それは「有機組織」ということで押さえられます。つまり、無数の有限が集まって無限の一体をなし、その全体が有機組織を形成しているという考えです。万有が相依相対(そうえそうたい)の関係にあるという様体が無限と呼ばれるわけです。そしてそこから、その中の一個の有限存在を「主」とした場合、他の万有のすべてがそれに対する「伴」となるという、「主伴互具(しゅばんごぐ)」の関係が見出(いだ)されます。『骸骨』では、この主伴互具の関係を覚了することが宗教の要であるとされ、その目覚めの主体となるものが「霊魂」として論じられています。また、『骸骨』では、「浄土」というものは、この主伴互具の関係に目覚めた状態を比説したものであるとも言われています。しかしそれで終わりではありません。このような関係に目覚めた主体には、万有の痛みを自分の痛みとして感じるといった、新たな生き方が開かれていくことになります。以上が、清沢先生の思想の基本的な枠組みとなるものです。

■ 死生の問題
 明治27年4月20日に、清沢先生は肺結核の診断を受け、その翌日から日記(『保養雑記』)をつけ始めます。ここに一つの転機を見ることができるかと思います。特にこの時期、人間の死生についての思索がなされるようになりました。清沢先生の『保養雑記』の自筆原稿が大谷大学の博物館に所蔵されていることが最近わかったのですが、それを見ますと「宗教は死生の問題について安心立命せしむるもの也」という有名な表現が書き直されたものであることがわかりました。その一節は、当初「宗教は死生の問題について説教するもの也」となっていたようです。それが書き直されたのはおそらく、澤柳政太郎から日高真実の死を知らされた書簡を受け取った9月9日のことであったと推測できます。いずれにせよ、このころから始まった課題が、「試稿」に受け継がれていきます。

■ 「在床懺悔録」の重要性
 「在床懺悔録」では、現生正定聚を主伴互具の関係に目覚めることとしてとらえています。しかしそれでも人間には、それぞれが個々別々のものであるという考えが染み付いているため、邪念が生じてしまいます。つまり現生正定聚というのは、迷妄存在でありながらも主伴互具の関係に生きていることに目覚めた在り方を指すわけですが、しかし同時に、私たちは依然として、有限孤立の思念から逃れることができない存在でもあるわけです。この「在床懺悔録」での確かめが、「試稿」でさらに深く考えられていくのではないかと私は考えています。「在床懺悔録」があったからこそ、「試稿」における独自の思索もあったのではないかということです。

■ 「他力門哲学骸骨試稿」の主題
 『骸骨』では有限無限の関係は一体としてとらえられていましたが、「試稿」では、有限の外に無限があるという別の思索がなされており、それが「根本の撞着(どうちゃく)」ということで押さえられます。そしてこのことが自力か他力かという宗教の問題として論じられていくわけですが、しかしここで重要なのは、有限者のほうから無限に目覚めていこうとしても、決して無限を明らかにし尽くすことはできないということです。ここで問われているのは、自力他力の単なる矛盾ではなく、自害害他からどうしても逃れられない無明存在としての私たちの在り方ではないでしょうか。つまり、主伴互具の関係性に目覚めることができない私たちが、どのようにすれば教えを聞くことができるのか。清沢先生が「試稿」を書いたことの意味は、ここにあったのではないかと私は考えています。
(文責:親鸞仏教センター)
西本 祐攝(にしもと ゆうせつ)氏
大谷大学短期大学部専任講師
 1975年生まれ。2004年大谷大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2007年大谷大学にて博士(文学)取得。大谷大学任期制助手、大谷大学非常勤講師を経て、2007年大谷大学短期大学部助教に着任、2011年大谷大学短期大学部専任講師。 現在に至る。研究領域は、真宗学、親鸞の思想研究、清沢満之研究。
 共著 に『清沢満之と近代日本』(法藏館、2016年)。論文に「「現在安住」についての一考察 」(『真宗教学研究』第24号、真宗教学学会)、「清沢満之における『歎異抄』の受容とその背景」(『真宗研究』第50輯、真宗連合学会)、「石水期・清沢満之における「現生正定聚論」の究明(上)(下)-清沢満之における「現在安住」の思想的背景-」(『親鸞教学』第91号、同95号、大谷大学真宗学会)、「清沢満之と「宗教」」(『真宗総合研究所紀要』第32号、大谷大学真宗総合研究所)、「大谷大学編『清沢満之全集』編纂の背景と課題」(『真宗総合研究所研究紀要』第35号、大谷大学真宗総合研究所)など多数。
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