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研究活動報告
現代における人間像に学ぶ研究会
 「現代における人間像に学ぶ研究会」は、現代の課題に真摯に取り組んでおられる方々に直接インタビューし、「現代の人間像」を学び、社会から要請されている親鸞仏教の課題を探ろうとするものである。その2回目は、2004年4月2日、東京ガーデンパレス(文京区)において、精神科医の高岡健氏をお招きし、うつ病をめぐって、現代の人間の苦悩と新しい生き方の発見について、お話をうかがった。ここに、その一部を紹介する。
競争社会における現代人の苦悩と希望
高岡 健氏にインタビュー

聞き手:藤原 正寿(親鸞仏教センター研究員)
■新自由主義とその問題点
――先生は、著書のなかで、現代の競争を原理とした「新自由主義」と、人間の苦悩は深く関わっているとおっしゃっておられますが、その新自由主義について、またそこにある問題点などについてお聞かせください。

高岡 「新自由主義」とは、一言でいえば、政府を小さくしていく思想です。その結果、福祉あるいは教育を国家がフォローせずに、「それぞれ個人の責任ですよ」というふうに自己責任化するわけです。そうすると、活躍できる人にはチャンスがどんどん増えますが、何かのきっかけでチャンスから外れてしまった人には、敗者復活戦さえなかなかできないという世のなかになってしまいます。では、大きな政府をつくって、福祉や教育にどんどん力を入れていけばいいのかと言えば、一方で、国家予算がパンクしてしまうという矛盾が出てきます。
 私は、そういう場合、常に考えなければならない原則は、それぞれの国のなかで生きている人びとの立場と言いますか、生きている人の視点に戻っていくということだと思っています。
 医師である私の場合は、診察室に来られる方が中心ですから、どうしても患者さんを通して、人びとの生き方や感じ方を見ていくことになります。だから、「ごく限られた人を通しての考え方ではないか」と、おっしゃられればそのとおりなのですが、しかし、限られた人を通して見るだけであっても、普遍性に至ることができます。なぜかと言えば、病気というものは、体の病気でも心の病気でも、やはり世界の縮図であるからです。
 だから、病気を通して世界を見る方法は、必ずしも外れたやり方ではなく、むしろ正しい結論へ至る一つの道筋であるというふうに思っています。そういう面から考えてみると、新自由主義の問題点がいくつか指摘できます。
 一つには、すべて個人の責任に返してしまうことによって、その人に、より大きなプレッシャーを与えてしまうということです。体の病気の場合で言えば、例えば、肥満やコレステロールに対して、“自己管理できない人は社会のなかで働く資格がない”という論調が、アメリカを中心に、いわゆる先進国のなかで広まりつつあります。でも、それは本当なのでしょうか。いろいろな検査結果から見ても、実は、肥満の基準については、はっきりしないことが多いのです。にもかかわらず、いかにも肥満が悪であるかのように吹聴されている。その本質は、“自分で自分を管理しなさい”“管理した証拠を数字で見せなさい”と言うところにあります。つまり、自己責任論がもたらす苦悩です。

――それは、うつ病についても同じことが言えるのでしょうか。

高岡 まったく質的には同じことなのです。軽症うつ病の場合ですと、周囲から見てもどこがつらいのかが、よくわからない状態が多いのです。そうすると、うつ病のつらさに耐えて、そして組織のために働いている人が、まさに“自己管理のできている人”というふうに扱われがちです。  しかし、それに耐えられなくなってしまった人は、「新自由主義」を基準にして言えば、“だめな人間”なのです。だめな人間が復活していくための条件はただ一つで、「抗うつ剤を飲んで、元気を取り戻して、そして、また第一線に出て活躍しなさい」というかたちしかありません。まさに悪循環の連鎖を作り出してしまっているのです。私が、そういう方々を診てきて感じることは、もう、命がいくつあっても足りないんじゃないかということです。
■うつ病の功罪
――先生の『新しいうつ病論』(雲母書房)という著書には、「絶望の中に見える希望」という副題がついていますが、うつ病ということの功罪についてお話いただけますか。

高岡 軽症うつ病というのは、自殺というかたちで命を落とす直前で、自分の生き方を変更する機会を与えられたことを意味する、というふうに考え直すことができると思います。企業のなかで闘いながら生きていくという生き方を離れて、逆に「私はこれまで、いったい誰のために働いてきたのだろうか」と、振り返ることができるための好機だと思うのです。
 すると、例えば、それは社会の枠組みのなかで、他人から自分が優れているという評価を得たいというところに、大きな動機があったのではないかと振り返るゆとりが生まれます。それに対して、今度は、自分が自分を評価できるような生き方に転換していくことができるわけです。これが、うつ病の「功」の部分です。
 しかし、逆にそれができずに、“自分はだめな人間だ”というふうに思い込んでしまって、とにかくだめじゃなくするために、より一層これまでの生き方を強めていこうとすれば、もう自殺しか残されていないというところに突き進んでいくことになります。そういう生き方をしていくとすれば、これが、うつ病の「罪」の部分になるでしょう。
 確かにこれまでは、ある意味で、企業と二重写しにして生きていけば、それなりに満足できる人生が得られたわけです。それがバブル崩壊以降、まったくできなくなってきています。そういうときに、うつ病が起きやすくなります。しかし、これまでの自分と集団を二重に重ね合わせた生き方から、ほんの少しだけでも違った生き方へと転換させるための一つのサインだと考えることができれば、うつ病は、絶望ではなく希望になるだろうと思うのです。
(文責:親鸞仏教センター)
※高岡 健氏のインタビューは、『現代と親鸞』第7号(2004年12月1日号)に掲載しています。
高岡 健(たかおか けん)
岐阜大学医学部助教授
1953年、徳島県生まれ。岐阜大学医学部卒業後、岐阜赤十字病院精神科部長などを経て、現在に至る。精神科医、日本児童青年精神医学会理事。著書に『新しいうつ病論』『人格障害論の虚像』(以上、雲母書房)、『引きこもりを恐れず』(ウェイツ)、『不登校を解く』(共著・ミネルヴァ書房)ほか多数。
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