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研究活動報告
『西方指南抄』研究会
 親鸞筆『西方指南抄』所収の『法然聖人御説法事』に、浄土三部経の教えは「娑婆のほかに極楽あり、わが身のほかに阿弥陀仏まします」と説くものだとする法然(1133~1212)の言明が載る。ごく当然の主張に思われるが、己心に浄土を、また弥陀を観ていくのがむしろ中国浄土教の主流であった。また、法然が批判対象とするいわゆる「天台本覚思想」にはこの傾向が著しく見える。この違いに法然の画期があり、法然が見据えた課題も見えてくる。そこで本研究会では、2015年12月14日、花野充道氏(法華仏教研究会主宰)を講師に迎えて、天台本覚思想を切り口に、現代仏教の課題も射程に入れた問題提起をいただいた。

天台本覚思想と親鸞

 親鸞仏教センター研究員   中村   玲太
序 学問と信仰
 花野氏は天台本覚思想の検討に先がけて、現代向き合うべき「学問と信仰」について以下のような提言をされた。

 現今の仏教研究は、仏教が本来もつ宗教性、すなわち、信心や修行、覚(さと)りや救い、祈祷や修法、現世利益や死者供養、といった行動や体験と切り離して進められているが、はたしてそれでよいのであろうか。そのような現状を評して、「仏教学ますます盛んにして、仏教いよいよ滅ぶ」と揶揄(やゆ)されるのである。客観的な近代仏教学の成果を無視して、後ろ向きに、中世に確立された主観的な信仰世界に閉じ籠(こも)るか、それとも前向きに、客観的な研究成果をふまえて、高次の主体的な信仰の学問を構築するか、そのいずれかを選択すべき時代に入っている。教団で伝統的に用いている文献の真偽について疑義が提出された場合、現代人の理性に耐えられるように、客観性をふまえた主体的な信仰主義(護教主義)に立って、反論できるものは反論するとともに、反論できないものは率直に認めて、歴史的事実に立脚した新たな信仰の学問を確立していく必要があると思う。
  現代は、主観(信仰)と客観(学問)とを統一した、新たな信仰の学問の樹立を模索すべき時代に入っている。インド、中国、日本と展開してきた仏教思想をふまえて、主体的に自らの思想史観を提示するとともに、真偽論の最新の成果をふまえて、主体的に自らの信仰する祖師像を提示することが、これからの仏教研究、祖師研究の課題ではあるまいか。
1 天台本覚思想と親鸞
 まず花野氏は、議論の前提となる本覚思想の研究史を概説された。  最初に本覚思想研究の重要性を指摘された島地大等氏は、「本覚門の信仰」(『思想と信仰』〔明治書院、1927〕所収)のなかで、多年の修行後に始めて覚る「始覚門の信仰」に対して「本覚門の信仰」を以下のように論ずる。

本覚門の信仰とは、現実の中に理想を実現して、現実を絶対肯定する信仰である。煩悩具縛の凡夫のまま覚り、また救われるから、凡夫のための仏教と言える。しかし煩悩の現実をそのまま肯定するから、堕落する危険性もある。 (530頁、花野氏による要旨)
 島地氏は、「本覚門の信仰」を日本仏教の特色とし、天台本覚思想を仏教思想上の「クライマックス」と評価する。親鸞については、「其の教学の内容に立入りて、之を抽象し来る時は、また中古天台の本覚思想と極めて相近似するを知らん」(『天台教学史』〔中山書房、1976〕、513頁)と論じている。
 天台本覚思想と親鸞について、独自の見解を示したのは田村芳朗氏である。田村氏は『鎌倉新仏教思想の研究』(平楽寺書店、1965)の中で、「法然にくらべてみるときは、親鸞は、むしろ、この自他一如・絶対不二のほうを、表面にうちだしてきているといえよう」(529頁)と主張し、「親鸞の仏凡一体観は、聖道門のそれとは違うということがいわれるけれども、ともあれ、仏凡一体観は、他力の徹底からは生まれてこない」、「親鸞にあっては、仏凡一体が、もとをなしている。仏凡一体なるがゆえに、はからう要がないのであり、日常そのままでよしなのである」(533頁)と論ずる。
 このような田村説に対して、花野氏は弥陀を絶対的な仏と仰いで帰依するところに、弥陀の本願力に包まれて無我となり、仏凡無分別・自他一如(「如来等同」)の救済世界に入れるのではないか。むしろ仏凡一体の境地は、他力の徹底から生まれるのではないか、と提言された。花野氏の問題提起を受けて、法然と親鸞の違いをどう考えるのか、はたして凡夫が無分別の境地を証得できるのか、そもそも「仏凡一体」とは何か等々、研究会のスタッフ間で激論が交わされた。
 さらに花野氏は、『大乗起信論』の理智不二法身説(合真開応説)と、天台智顗の理法身・智報身説(開真合応説)を説明して、親鸞の仏身論は理智不二法身説に属する、と論じられた。
2 仏教思想の本覚的展開
 現実肯定の色彩を色濃く帯びた仏教思想が日本において花開く。これを花野氏は「仏教思想の本覚的展開」と呼ぶ。このような仏教の日本的変容を、(A)大乗仏教の正統で必然的な展開と見るか、(B)あやまった展開で堕落と見るかは、意見の分かれるところであるが、日本において即身成仏思想が重視されたこと、その線上に現実肯定の本覚思想が発達したこと、本覚思想をふまえて道元・親鸞・日蓮の仏教が成立したこと、などを指摘された。そして、現代日本の在家仏教化、僧侶の肉食妻帯なども「仏教思想の本覚的展開」としてとらえることができる、と論じられた。
 花野氏の提言を受けて、日本仏教の堕落の側面も決して等閑にふしてはならないが、現実のこの「生死世界」を肯定する仏教思想が、なぜ今日まで脈々と宗教的生命を維持してきたのか、その思想史的意義を改めて問う必要があるのではないかと考える。

※花野充道氏の講義と質疑は、『現代と親鸞』第34号(2016年12月1日)に掲載しています。

花野 充道(はなの じゅうどう)氏
法華仏教研究会主宰
 1950年生まれ。天台本覚思想研究の第一人者。早稲田大学にて学位号取得(文学博士)。現在、法華仏教研究会主宰。
 著書に『天台本覚思想と日蓮教学』(山喜房佛書林、2010)、『シリーズ日蓮』(春秋社、2014~2015[第一巻から第三巻の責任編集者])。論文に、「日蓮の本尊論は大曼荼羅か一尊四士か」(『印度學佛教學研究』63巻第1号、2014)など多数。
『西方指南抄』研究会 於:フクラシア東京ステーション
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