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研究活動報告
「三宝としてのサンガ論」研究会
 2019年1 月22日、東京大学より河崎豊氏を講師にお迎えして、「ジャイナ教の信仰と生活」というテーマで、外部講師招聘研究会を開催した。釈尊と同時代・同地域に発生したジャイナ教の学習を通して、釈尊が出家するとき目指した沙門の姿やサンガの形成を考えていくことを目的として開催されたものである。講師の河崎氏からは、仏教の三宝と照らし合わせながら、ジャイナ教の教義や修行・戒律の諸相について、現在のジャイナ教研究の状況なども交えてご教示いただいた。ここにその一部を報告する。 (親鸞仏教センター研究員 戸次 顕彰)

ジャイナ教の信仰と生活

東京大学大学院人文社会系研究科助教
河崎 豊 氏
■ はじめに
 ジャイナ教という宗教は、現在のインドでもマイノリティーで、同じように研究者も世界中で非常に少ない領域です。しかし、膨大な文献が残されており、その言語の意味や文法の解明が進めば、ジャイナ教の具体的な実態がより一層明確になっていく魅力的な研究領域です。今後も、研究の進展に伴って、仏教学の記述も書き換わる可能性があるかもしれません。今日は、最近の学説の紹介もしながら、ジャイナ教について概説します。

 ところで、仏教とは異なりますが、ジャイナ教にも「三宝」があります。正信・正知・正行です。今日はこの研究会が「三宝としてのサンガ論」という名称であることから、ジャイナ教を仏教の三宝(仏法僧)に当てはめて説明することを試みたいと思います。
■ 仏
 仏教の「仏」に相当する概念は、ジャイナ教では「ティールタンカラ」です。この岸から、かの岸への「渡し場(ティールタ)を作る人(カラ)」という意味があります。仏教の開祖を釈尊とすると、ジャイナ教の開祖に当たる人はマハーヴィーラです。この両者の伝記には類似する点が驚くほど多くあります。ジャイナ教では、過去にもティールタンカラがいたと考えられており、マハーヴィーラは現時点での最後のティールタンカラで、24代目に当たります。これは仏教の過去仏思想と似たものと言えます。
 また、この人はジャイナ教の開祖というより、改革者と呼ぶほうが適切かもしれません。改革者と呼ばれる理由については、それまでの4 つのサンヴァラ(漢訳仏教語の「律儀(りつぎ)」に相当)を5つのヴラタ(誓戒〔せいかい〕)に改修したり、懺悔(さんげ)の儀礼を導入したりしたことが、具体的な改革の事例として挙げられます。活躍年代は、白衣 派(びゃくえは)と空衣派(くうえは)の伝承で若干異なりますが、紀元前5 - 6 世紀ころと考えられています。

 伝記の内容は比較的詳しく書かれており、ヴァイシャーリー近郊で誕生し、白衣派によれば、家庭や社会での為すべきことを為し終えた30歳のときに出家します。その後6 年間、後にアージーヴィカ教の教主となるマッカリ・ゴーサーラ(仏典に見られる六師外道の一人)と共に修行しました。最近の研究では、この人物がマハーヴィーラに大きな影響を与えていると考えられています。42歳で一切智を獲得して「ジナ(勝者)」となり、初説法をします。この「ジナ」が「ジャイナ教」の名称の由来でもあります。この初説法のとき、11名のバラモンと討論して彼らを打ち負かし、その後、彼らは教団長となりました。こうして最初の教団が形成され、72歳で死去したことになっております。釈尊とマハーヴィーラの伝記の比較は学界における今後の課題として重要だと思います。
■ 法
 ジャイナ教における「法」については、認識論・存在論など多岐にわたりますが、今日は解脱道を中心にお話をします。ジャイナ教の基本路線は「自力救済」です。出家修行者と在家信者とでは、修行方法が別であり、在家者は解脱が不可能であるとされます。仏教では修行によって仏を目指すという菩薩道がありますが、ジャイナ教ではジナを目指すというような目的をもつ心は邪念として退けられるという大きなちがいがあります。

 ジャイナ教では霊魂(ジーヴァ)の存在を認めます。何らかの永遠不滅の実体を認めなければ輪廻(りんね)が成り立たないというのが、仏教以外のインドの宗教の基本的な考え方です。霊魂は本来、純粋無垢(むく)な存在ですが、人間の日々の行為(業)が物 質化して、これが垢(あか)のように霊魂に付着し、これによって清浄な霊魂が重くなって下へ沈むことで、輪廻すると考えられています。そこで苦行によって古い業を焼き払い、新しい業はサンヴァラ(律儀)によって遮断するというのが、ジャイナ教の基本的な解脱へ至るメカニズムです。
 これを支えている修行の前提となっているのが、マハーヴラタ(大誓戒)です。これは仏教の五戒に相当します。ジャイナ教の場合は非暴力・不妄語・不偸盗(ちゅうとう)・不淫・無所有(物理的な無所有ではなく、所有に対する執着を断つこと)の五つで、その根本は非暴力です。すべてのヴラタが「しない」「させない」「他人がしているのを容認しな い」の三つで構成されます。また、この他に行儀作法や奉仕・学習などの内的な苦行と断食などの外的な苦行など、さまざまなものがあります。
■ 僧
 ここまで、仏教の仏法僧に対応させながらジャイナ教を説明してきましたが、ジャイナ教研究の中で最も研究が進んでいないのが僧(サンガ)です。出家教団がどのような形で運営されていたのかなどの実態については、未解明な点が多い領域ですので、今日はごく基本的なことのみをお話します。

 仏教同様、ジャイナ教でも出家・在家の男女四衆の構成があり、見習い(仏教の沙弥〔しゃみ〕に当たる)・長老・和尚・阿闍梨(あじゃり)などの地位や役職も存在します。
 在家信者の場合には明確な階級はありません。しかし、仏教と大きく異なる点は、先ほどの「マハーヴラタ」を少し弱めた「アヌヴラタ」をはじめ、在家信者に対して膨大な禁止事項を設けていることです。その他、特定職業への就労を禁止するなどの特徴もあります。なぜ在家者の生活に対して、このように多くの規制があるのかという理由については、在家信者コミュニティーの結束を高めるためではないかと思っています。ジャイナ教が社会的にマイノリティーであったとしても、インドに生き残ることができた要因の一つは、こうしたグループの高い団結力によるものであると私は考えております。

(文責:親鸞仏教センター)




※河﨑氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第42号(2020年6 月1 日発行予定)に掲載予定です。

河崎 豊(かわさき ゆたか)氏
東京大学大学院人文社会系研究科助教
 2004年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了(博士[文学])。
 大阪大学助手、大谷大学助教、大谷大学真宗総合研究所特別研究員などを歴任。
 中期インド諸語やサンスクリット語で著されたジャイナ教資料を用いた、ジャイナ教出家修行者の戒律や教団運営、修行実践の変遷を主な研究領域とする。
 主な論文に、「誰が出家できるのか?」(『ジャイナ教研究』第24号、2018年)、“Haribhadra on Property Ownership of Buddhist Monks,” International Journal of Jaina Studies Vol.13- 5 、2017年)など。
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