最近は、可愛らしい小坊主ではない一休を描き出そうと『オトナの一休さん』(Eテレ、2016~2017)が制作され、本作の作画を担当した伊野孝行氏の『となりの一休さん』(春陽堂書店、2021)が刊行されるなど、「風狂」「破戒」というべき一休の実像がより一層着目されてきている。

こうした破天荒な一休の姿を知ったとき、受け手のリアクションは「そんな姿に却って興味をそそられた」というものと「可愛らしい一休さんとのギャップにがっかりした」という真逆のものになりもするのである。

 

一休像にどのような反応を示すかで、自らが重んじる価値観に気づかされることもあろう。いわば、一休像は自己の「合わせ鏡」として機能するものでもあるのかもしれない。

 室町期の在世当時から、同時代の形骸化を批判しつつ女犯も厭わぬ言動で世をアッと言わせた一休は、果たして今なお「なやましい」存在といえよう。


飯島 孝良 IIJIMA Takayoshi

親鸞仏教センター嘱託研究員、花園大学国際禅学研究所副所長
著書に、『語られ続ける一休像―戦後思想史からみる禅文化の諸相』(ぺりかん社、2021)など。

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